「お母さん、法律のことはよく分からないかもしれませんが、正規の手続きを踏めば、彼らが裁判で負けても賠償金は支払われます。ただ、示談で解決するよりは金額が少なくなるだけです。通常、幸治の医療費は彼らが負担することになります。私たちは栄養費や精神的損害の賠償は求めません。法外な金額を要求して恐喝するつもりはありません。弟の健康で金儲けをしたくないんです。裁判で勝てば、最低限の賠償金は支払われるはずですから、お金のことは心配しないでください」
「姉さん、そんな複雑な説明じゃ、母さんには理解できないよ。簡単に言えば、示談なら二千万円くらいの賠償金が得られるけど、正規の手続きを踏んで裁判所が相手に制裁を加えても、六百万円程度の医療費しか支払われない。その差額が大きいってことでしょ」と原幸治が言い終えると。