第74章：本性

「違うわ。私が変わったんじゃない、元々こういう人間だったの。だから...この数年間、あなたは私のことを全然分かってなかった。あなたが愛していたのは、あなたが思い込んでいた私であって、本当の私じゃないの」

実は、青木岑はずっと前からこの言葉を言いたかった...

寺田徹と知り合った時、彼女は既に自分を最も普通の女性に装っていた。

西尾聡雄との刻骨銘心の恋愛を経験し、彼女の心はすでに平野浩由のように静かになっていた。

だから、寺田徹が見ていた優しくて、思いやりがあって、素直で、気が利いて、少し弱々しい女性は、本当の青木岑ではなかった。

人間は世界で最も賢い生き物だ。時として、あなたが見る相手の姿は、ただその人が見せたいと思う姿に過ぎない。

本来の素顔ではないのだ...

青木岑の本性は、西尾聡雄だけが知っていた...

彼女は機転が利いて賢く、口が立ち、すべてを見下すような態度で、熊谷玲子が言うように、傲慢で生意気な、それこそが本当の彼女だった。しかし残念なことに、寺田徹はこの数年間それを見ることはなかった。

今、別れてやっと見ることができた。これは大きな皮肉としか言えない...

「岑...？」寺田徹はまだ何か言いたそうだった。

「もういい、黙りなさい。大体分かったわ。私の娘が頼みに行った時、あなたは家で他の女と浮気してたのね？今、うちの幸治が大丈夫で、手術費も払えたって聞いて、後悔して戻ってきたの？あなた本当に男じゃないわ。前は大した能力はないけど、少なくとも誠実だと思ってたけど、今見たら全然違うじゃない。誠実どころか、後出しジャンケンみたいなことばかりして。もうグズグズ言わないで、聞いてるだけでうんざりよ。出て行きなさい。別れた以上、私はもうあなたの伯母さんじゃないし、幸治もあなたの弟じゃないわ」

「伯母さん...」

「出て行きなさい。その誠意のないフルーツバスケットも持って」言い終わると、永田美世子は立ち上がってフルーツバスケットを手に取り、寺田徹とフルーツバスケットを一緒に押し出した。

「母さん、やったね！姉さんの恨みを晴らしてくれた」原幸治は親指を立てた。

永田美世子は青木岑を冷たく一瞥して、「次は男を選ぶ時、よく見極めなさい。こんなのばかりじゃ困るわ」