西尾聡雄が与えた時間は一時間だったが、リックはたった二十分で済ませた。
真っ赤なフェラーリのスポーツカーがGKの前に停まり、長身の男が黒いレザージャケット姿で車から降りた。
GKの中が騒がしくなった。フランスと日本のハーフということもあり、その端正な顔立ちは特に注目を集めた。
社長室にて
「やあ、聡雄、久しぶりだな」
「座れよ」西尾聡雄は立ち上がってオフィスのワインセラーに向かい、赤ワインを二杯注ぎ、一杯をリックに手渡した。
「俺を呼んだってことは、重要な用件があるんだろう?話してくれ」
リックは空のワイングラスを揺らし、微笑んだ……
西尾聡雄とは何年も前からの友人で、頻繁に連絡を取り合うわけではないが、親交は深い。
実際、男同士の友情は女とは違う。三日おきにお茶を飲んだり買い物に行ったりはしない。
しかし、本当に必要な時には必ず現れる。
リックの母はフランスの貴族で、父は地元の実業家だった。もっとも、表向きは実業家というだけだが。
一族は五つ星ホテルチェーンと、市内で最も豪華な月下倶楽部を経営している。
リックの一族の本当の商売はやくざだった。ただし、表向きは合法化された高級やくざというだけのことだ。
西尾聡雄はリックの向かいに座り、グラスの赤ワインを見つめながらゆっくりと口を開いた。「弘大運輸株式会社の社員、平野剛、男性、32歳」
「始末するか?」リックは首を切る仕草をした。
西尾聡雄は首を振った……
「昨夜、市立病院の前でトラックを運転して意図的に人を轢こうとした。背後に指示した者がいるはずだ。その人物を見つけ出してほしい」
「見つけ出した後は?全員始末するか?」
「必要ない。時には生きているほうが死ぬより怖いこともある。自業自得を味わわせればいい。とにかく、後患を残したくないんだ」
西尾聡雄は青木岑の安全を特に心配していたので、あれこれ考えた末、リックに頼むことにした。
「分かった、任せてくれ」
「ありがとう」リックの義侠心に対して、西尾聡雄は頭を下げて感謝した。
「礼なんていい。前回のアメリカでの兄貴の件も、お前のおかげだったしな。とにかく、いつでも言ってくれればいい」リックはグラスの赤ワインを一気に飲み干し、立ち上がって西尾聡雄の肩を叩いた。
「ああ」