青木岑は首を振って、「違うの。お母さんに時間をあげたいだけなの。体が弱いから、急に受け入れるのは難しいと思って」と言った。
西尾聡雄は青木岑の目をしばらく見つめ、最後には彼女の誠実な眼差しに負けてしまった。
「じゃあ、君の言う通りにしよう」
そう言うと、西尾聡雄は立ち上がって出て行こうとした……
「どこへ行くの?」
「会社に戻る」西尾聡雄は言いながら、白衣を脱いで出て行こうとした。
「食事をしてから行きませんか?下に社員食堂があるんですけど」青木岑はそう言って後悔した。西尾聡雄のような人が社員食堂に行くはずがない。
「結構です」
やはり、断られた……
ドアの前まで来たとき、西尾聡雄は何か気になることを思い出したように、数歩戻ってきて、テーブルの上のぬるま湯を一気に飲み干した。