第111章:抱擁

「動かないで、このまま抱かせて」西尾聡雄の声は優しく、青木岑は怖くて動くことができなかった。

「聡雄、何かあったの?」彼の様子がおかしいと感じた。

彼のあんなにツンデレで冷たい性格なのに、こんな風なはずがない。

「何でもない、ただ少し疲れて、君を抱きしめたくなっただけ」

青木岑はゆったりとした部屋着を着ていた。黄色で、スポンジ・ボブのキャラクターが付いていて、とても可愛らしかった。

髪は適当にまとめただけで、ふんわりと乱れていた。

西尾聡雄は紫がかった黒のシャツを着ており、袖口には高価なダイヤモンドが輝いていた。

彼は彼女の後ろでそっと抱きしめたまま、彼女特有の香りを貪るように嗅いでいた。

すると、落ち着かない心が一瞬で静まった……

青木岑が側にいると、突然世界が美しく見えてきた……