西尾聡雄は足を止めたが、振り向かなかった……
「会社はもう終わってるし、秘書に聞いたけど今夜の予定はないはずだ。何を忙しいんだ?」
西尾聡雄は黙ったまま……
「外で何か悪さをしているのか?」西尾父さんは眉をひそめて怒鳴った。
西尾聡雄は振り向いて、眉を上げた。「父さん、悪さって何のことですか?」
「聡雄よ、外でろくでもない女と付き合っているんじゃないのか?他の遊び人のように芸能界の女とごたごたするな。ためにならんぞ」
「ろくでもない?父さんの目には、息子がそんな趣味の持ち主に見えるんですか?」西尾聡雄は可笑しそうに言った。
「西尾社長、お坊ちゃまはそんな軽率な人じゃないと思いますが」大石社長が口を開いた。
「そうですよ、西尾伯父。西尾の人柄は私がよく知っています。学生時代、多くの女子が彼のことを好きでしたが、彼は誰にも興味を示しませんでした。メディアでも噂一つ立ったことがありません。きっと伯父さんの考えているようなことはないはずです」大石紗枝も言い添えた。