第117章:自虐

「これはもう諦めましょう。この話が広まったら、母が真っ先に私を殺しかねないわ」青木岑は助手席に座り、ココナッツジュースを飲みながら感慨深げに言った。

「ねぇ、お母様はまだ7年前のことを引きずってるのね。でも実際、西尾聡雄を責めることはできないでしょう。あの時、西尾聡雄は海外に行ってたし、あの最悪な両親がしたことを彼のせいにはできないわ。お母様は古風すぎるのよ。私から言わせれば、あなたと西尾聡雄の結婚は素晴らしいことじゃない。彼はイケメンで金持ち、何より、あなたに優しくて一途じゃない」

「物事はそう単純じゃないわ。もしそんなに簡単なら、誰も悩まないでしょう」

「そうね。でもいつかは知ることになるわ。その時のための心の準備はしておいた方がいいわよ」

「前も言ったけど、多分バレる前に私たち離婚することになるんじゃないかしら」青木岑は悲しげに考えた。