第117章:自虐

「これはもう諦めましょう。この話が広まったら、母が真っ先に私を殺しかねないわ」青木岑は助手席に座り、ココナッツジュースを飲みながら感慨深げに言った。

「ねぇ、お母様はまだ7年前のことを引きずってるのね。でも実際、西尾聡雄を責めることはできないでしょう。あの時、西尾聡雄は海外に行ってたし、あの最悪な両親がしたことを彼のせいにはできないわ。お母様は古風すぎるのよ。私から言わせれば、あなたと西尾聡雄の結婚は素晴らしいことじゃない。彼はイケメンで金持ち、何より、あなたに優しくて一途じゃない」

「物事はそう単純じゃないわ。もしそんなに簡単なら、誰も悩まないでしょう」

「そうね。でもいつかは知ることになるわ。その時のための心の準備はしておいた方がいいわよ」

「前も言ったけど、多分バレる前に私たち離婚することになるんじゃないかしら」青木岑は悲しげに考えた。

「もしかしたら、二人で白髪になるまで一緒かもしれないじゃない?」

「そうかな?」青木岑は玲子の言うようなことは想像すらできなかった。

「世界は広いし、可能性は無限大よ。あまり悩まないで」

熊谷玲子は車で青木岑を御苑のマンション入口まで送った。

しばらく話をした後、二人は別れ、熊谷玲子は車で去っていった。

青木岑がマンションに向かって歩きながら、何気なくスマートフォンを見た。

そして驚いた……

同窓会のグループLINEで、普段は発言しない西尾聡雄が一言だけメッセージを送っていた。「昨日の夕食は、青木岑と一緒に食べました」

その一言は晴天の霹靂のように波紋を広げた。

「えっ?紗枝さんが一緒に食べたって言ってなかった?写真まで載せてたよね」

「そうだよね、写真って加工したの?」

「当事者本人が否定したんだから、誰かの顔が潰れちゃうね」

「西尾様、青木美人様と復縁したんですか?」

「紗枝、これはどういうこと?」

みんなが騒ぎ立てる中、大石紗枝は黙り込んでいた……

今日は写真を投稿して自慢したかっただけなのに、自分で自分の首を絞めることになってしまった。

さらに予想外だったのは、西尾聡雄がグループで自ら発言したことだった。

彼はLINEを使わないと思っていたのに。知っていれば、あんな写真を投稿して面倒を起こすことはなかった。