「これはもう諦めましょう。この話が広まったら、母が真っ先に私を殺しかねないわ」青木岑は助手席に座り、ココナッツジュースを飲みながら感慨深げに言った。
「ねぇ、お母様はまだ7年前のことを引きずってるのね。でも実際、西尾聡雄を責めることはできないでしょう。あの時、西尾聡雄は海外に行ってたし、あの最悪な両親がしたことを彼のせいにはできないわ。お母様は古風すぎるのよ。私から言わせれば、あなたと西尾聡雄の結婚は素晴らしいことじゃない。彼はイケメンで金持ち、何より、あなたに優しくて一途じゃない」
「物事はそう単純じゃないわ。もしそんなに簡単なら、誰も悩まないでしょう」
「そうね。でもいつかは知ることになるわ。その時のための心の準備はしておいた方がいいわよ」
「前も言ったけど、多分バレる前に私たち離婚することになるんじゃないかしら」青木岑は悲しげに考えた。
「もしかしたら、二人で白髪になるまで一緒かもしれないじゃない?」
「そうかな?」青木岑は玲子の言うようなことは想像すらできなかった。
「世界は広いし、可能性は無限大よ。あまり悩まないで」
熊谷玲子は車で青木岑を御苑のマンション入口まで送った。
しばらく話をした後、二人は別れ、熊谷玲子は車で去っていった。
青木岑がマンションに向かって歩きながら、何気なくスマートフォンを見た。
そして驚いた……
同窓会のグループLINEで、普段は発言しない西尾聡雄が一言だけメッセージを送っていた。「昨日の夕食は、青木岑と一緒に食べました」
その一言は晴天の霹靂のように波紋を広げた。
「えっ?紗枝さんが一緒に食べたって言ってなかった?写真まで載せてたよね」
「そうだよね、写真って加工したの?」
「当事者本人が否定したんだから、誰かの顔が潰れちゃうね」
「西尾様、青木美人様と復縁したんですか?」
「紗枝、これはどういうこと?」
みんなが騒ぎ立てる中、大石紗枝は黙り込んでいた……
今日は写真を投稿して自慢したかっただけなのに、自分で自分の首を絞めることになってしまった。
さらに予想外だったのは、西尾聡雄がグループで自ら発言したことだった。
彼はLINEを使わないと思っていたのに。知っていれば、あんな写真を投稿して面倒を起こすことはなかった。