第125章:ずうずうしい

「ついでだ」西尾聡雄は青木岑をちらりと見て言った。

青木岑は何も言わず、助手席のドアを開けて車に乗り込んだ。

一晩の疲れで心身ともに疲れ果てていたので、車に乗るとすぐに目を閉じ、休息を取った。

西尾聡雄も黙ったまま、車内の音楽を流した。

優しい音色が流れ出した。水木の里の歌だった……

あなたが去る夢を見て、私は涙で目を覚ました。

夜風が窓辺を吹き抜けるのを見て、私の愛が伝わるかしら。

年老いてゆくその日まで、あなたは私のそばにいてくれるの。

嘘と誓いが、過去とともにゆっくりと消えていくのを見つめて。

多くの人があなたの若き日の美しさに魅了されたけれど、誰が時の無情な変化に耐えられるだろう。

多くの人があなたの人生に現れては去っていったけれど、一生あなたと共に、私はずっとそばにいる。

青木岑は眠るつもりだったが、この歌を聴いて目が覚めてしまった。

90年代生まれだが、アイドルには興味がなく、ただ昔の歌、特にキャンパスソングが好きだった。

以前、お気に入りの曲をたくさんダウンロードしたUSBメモリを持っていた。

後に引っ越しが急だったため、西尾聡雄は何も持ち出させてくれず、なくしてしまった。今でも思い出すと残念だ。

そのUSBメモリの最初の曲は、水木の里の「一生あなたと共に」だった。

まさか今、西尾聡雄の車でも聴けるとは、本当に嬉しい驚きだった。

しかし次の曲が松島菜々子の「愛が近づくとき」だと分かった時、青木岑は落ち着かなくなった。

目を開けて尋ねた。「曲の順番が私の持っていたものと同じね、なんて偶然」

「このUSBメモリは、君が以前住んでいた古い家で見つけたものだ」

「えっ……」西尾聡雄の言葉に、青木岑は大きな衝撃を受けた。

「つまり、私のUSBメモリを取ったってこと?しかも私に言わずに。そんな無礼な行為だと分かってる?」青木岑は怒りを覚えた。

「自分のものを使うのに、どうして無礼になるんだ」西尾聡雄は言い逃れた。

「お願いだから、これは私のものでしょう?」青木岑は反論した。

「私たちは夫婦だ。全ての財産は共有だ。君のものは私のものだ」西尾聡雄は強引に宣言した。

青木岑は息苦しくなり、反論した。「じゃあそういうことなら、GK企業グループの半分も私のものね。今から家で寝そべってても億万長者ってわけ」