「うん、高いわ。とても高いの」西尾聡雄は意図的に言った。
「高いと思ってたわ。パッケージを見ただけでわかるもの。でも本当に美味しいわ。高いだけの価値はあるわね。ハーゲンダッツのアイスクリームみたいに」青木岑は感慨深げに言った。
「だからこそ、残業で疲れてる君には、良いものを食べてもらわないとね」
「それなら、残りを全部食べちゃおうかな」そう言うと、青木岑はさっと立ち上がり、残った小籠包と海老餃子を手に取って再び食べ始めた。
西尾聡雄は苦笑いを浮かべた……
病院で青木岑と暫く過ごした後、西尾聡雄は名残惜しそうに帰っていった……
青木岑がオフィスに戻ると、山田悦子から矢継ぎ早に質問を浴びせられた。
「先輩、早く教えて!あの男性、誰なの?」
「本当に友達よ」
「信じられない、信じられない。早く言って、新しい彼氏でしょう?」
「はい、そうよ」若い女の子を騙し通すのは無理だと思い、青木岑は認めるしかなかった。
山田悦子は手を叩いて笑った。「やっぱり彼氏だったのね!すごくステキな人じゃない。どうやって知り合ったの?」
「えーと……何年も前からの知り合いよ」青木岑は少し考えて答えた。
「じゃあ、幼なじみってことね」
「まあ、そうね」
「すっごくロマンチックじゃない!そうそう、彼、お金持ちでしょう?何の仕事してるの?夜食の包装、丸福ホンコン料理のものだったわよね。あそこ超高級で、一人5000円以上するのに。夜食だけで1万円以上使うなんて、普通のサラリーマンじゃないでしょう」
この山田悦子は、おっとりしているように見えて、実は流行に敏感で、食べ物や服、小物にとても詳しかった。
だから目が肥えていて、青木岑が誤魔化そうとしても無理だった。
「えーと……まあ、少しお金があるかな。家族でちょっとした商売をしているの」
「お金持ちでしょう?」
「うん、成金よ」青木岑は苦しそうに答えた。西尾聡雄の身分についてはあまり明かしたくなかった。
目立ちすぎるから……
もしこの子が西尾聡雄がGKのボスだと知ったら、明日には病院中に広まってしまうだろう。