第141章:異動

「はい、その通りです」

「だめ、会いに行きたい。直接確かめたいの」吉田秋雪は諦めようとしなかった。

最後に寺田徹は彼女を抱き上げ、階段を駆け上がった。これ以上騒ぎ続けるのは、あまりにも恥ずかしいことだったからだ。

青木岑と山田悦子は産婦人科で荷物をまとめ、出発の準備をしていた。産婦人科のスタッフ全員が玄関で見送りに立っていた。

平野部長は静かに青木岑の袖を引っ張り、「昨夜の手術は見事だった。完璧な手術だったよ」と言った。

「ありがとうございます、平野部長」青木岑は口角を引き締めた。

「今度時間があったら個人的に食事に誘わせてもらいたい。手術の詳細について話し合いたいんだ」

「えっと...」青木岑は驚いた。医術で有名な平野部長までが、彼女と食事をして医術について話し合いたいと言うとは。

「青木さん、しばらくあちらで待機していてください。騒ぎが収まったら、院長に戻すように話してみます」看護師長は青木岑との別れを惜しんでいた。

「大丈夫です、看護師長。どこにいても同じです」

「そうですよ、看護師長。先輩には私が付いていますから、心配しないでください」山田悦子は段ボール箱を抱えながら、青木岑の後ろで密かに笑っていた。

今回の検査科への異動を、彼女はとても喜んでいた。

産婦人科は忙しく夜勤もあり、給料も安かったが、検査科は違った。

単純な採血と検査だけで、機器も揃っている。そして最も重要なのは、検査科には夜勤がないことだった。

これからは夜更かしをしなくて済む。本当に最高だった。病院の通達では処分とされていたが。

山田悦子にとって、これは院長が彼らに与えた褒美のようなものだと感じられた。

青木岑は産婦人科の同僚たちと名残惜しく別れを告げ、山田悦子と共に検査科へ向かった。

検査科の主任は中年の男性で、少し太めで、眼鏡をかけていて、笑うととても愛らしく、岡田冬子という可愛らしい名前だった。

「岡田主任、青木岑です。これからよろしくお願いします」

「まあ、あなたが噂の青木さんですか。さあさあ、こちらへどうぞ」

「あの...立っていて大丈夫です」