数秒後、看護師さんは電話を置いて、少し困った様子で言いました。「事務所に電話しましたが、誰も出ません。おそらく手術中でしょう」
「ありがとうございます」紳士的に礼を言った後、西尾聡雄は4階の婦人科救急室へ直接向かいました。
西尾聡雄は黒のカジュアルスラックスに、ネイビーのオーダーメイドシャツを着て、手には買ってきた夜食を持っていました。
青木岑をどうやってなだめようかと考えながら、婦人科の診察室まで来ると、ドアが開いていて中には誰もいないことに気づきました。
この時間帯、青木岑が診察室にいないなら、回診に行っているのだろうか?
そう考えながら、西尾聡雄は廊下の壁にもたれかかり、タバコを一本取り出して吸い始めました。
深夜だったため、病院には人が少なく、誰も気にしませんでした。
一方、手術室では青木岑が手際よく赤ちゃんを取り上げ、臍帯を切断した後、やっと安堵のため息をつきました。
「悦子、赤ちゃんを抱いて体重を測って、それからお父さんに見せて、新生児室に連れて行ってください」
「はい、男の子ですか女の子ですか」新生児の泣き声を聞いて、山田悦子は興奮した様子でした。
「女の子よ」
「女の子はいいですね。女の子はお母さんの宝物ですから。このお母さんは幸せですね」そう言って、山田悦子は青木岑から赤ちゃんを受け取り、脇に抱えて、体を拭いてから電子秤に乗せて体重を測りました。
「身長52センチ、体重4.1キロです」山田悦子は嬉しそうに言いました。
青木岑は額の汗を拭いながら笑って言いました。「8斤以上もあるなんて、本当に大きな赤ちゃんね」
「そうですね。赤ちゃんがこんなに大きくて、しかも骨盤位だったら、自然分娩は無理でしたね」山田悦子はぶつぶつと言いました。
「先輩、私は赤ちゃんを連れて行きますが、ここは一人で大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、行ってらっしゃい」そう言って、青木岑は頭を下げ、慎重に産婦の傷口を縫合し始めました。一針一針、丁寧かつ素早く、20分もかからずに全て終わりました。
青木岑は手術を終えた後、産婦のデータを確認し、全ての指標が正常であることを確認してようやく安心しました。
そして手術室を出た時、あの男性と一緒に産婦を病室まで運ぼうと思いましたが。
廊下には誰もいませんでした……