「先輩、あなたを探してる人がいるみたいですよ」山田悦子は立ち上がって首を伸ばし、窓の外を見ながらつぶやいた。
青木岑も聞こえていた。自分の名前は珍しいので、誰かが青木岑と呼べば、間違いなく自分を探している人に違いない。
その時、遠くから数人のごつい男たちが怒った顔で近づいてきた。
彼らは警備員の制止を無視して、検査科の入り口まで突っ込んできた。
「青木岑はどこだ、出てこい!」先頭の大きな頭をした、首に金のチェーンを下げた男が恐ろしい形相で叫んだ。
「私が青木岑ですが、何かご用でしょうか?」
「お前が青木岑か?」男は再度確認した。
青木岑は頷き、向かい側を見た。四人の男たち、誰一人として見覚えがなかった。
「じゃあ話が早い。俺たちは患者の伊藤史子の家族だ。俺は彼女の兄貴だ。妹が先日入院して帝王切開を受けたが、お前が手術したんだな?」