第148話:事件発生

「もういいわ。今はあなた自身が大変なのに、私のことは気にしないで。お腹すいてない?何か作ってあげようか?」

熊谷玲子は、青木岑が無意識にこの話題を避けているのを見て、彼女と西尾聡雄の間にまだ心の溝があることを悟った。

「うん、ちょっとお腹すいたかも。インスタントラーメン作ってくれない?」

「うちにそんなジャンクフードなんてないわよ。温かい麺にするから、待っててね」

そう言うと、青木岑はエプロンを付けて台所へ向かった……

青木岑が一緒にいてくれたおかげで、熊谷玲子の気持ちは少し落ち着いた。麺を食べ、お風呂に入って早めに就寝した。

翌日、青木岑と一緒に外出し、青木岑は仕事へ、彼女は家に帰った。

別れ際、青木岑は心配そうに注意を促した。「私が言ったことを覚えておいて。LINEも電話も全部ブロックして、もう連絡を取らないで。そうしないともっと苦しむわ。それに、まだ未練が残っているなら、彼の奥さんの今の立場が、あなたの将来の姿になるわよ」

「わかったわ。安心して、一晩面倒を見てくれてありがとう」

「余計なことは言わないで、早く帰りなさい。何かあったら電話してね」

熊谷玲子と別れた後、青木岑は第一病院へ向かった。

検査科の仕事は非常に単純で、当直の人数も多いため、それほど忙しくなかった。

検査科のスタッフは青木岑と山田悦子に対してとても親切で、山田悦子はとても喜んでいた。

暇な時は、青木岑とゴシップなどを話して過ごしていた。

「ねえ、先輩、あなたが手術した妊婦さん、明日退院するんですって。赤ちゃんの検査結果も全部正常だったそうですよ」

「うん、それは良かったわ。新生児科を通りかかった時に赤ちゃんを見たけど、とても元気そうだったわ」と青木岑は笑顔で答えた。

「結局、彼女はあなたに感謝すべきなのに。あなたがいなければ、母子ともに命が危なかったのに。でもその妊婦さん、手術から今まで一言のお礼も言わないなんて、まるで私たちの当然の仕事みたいな態度ですよ」

「それは仕方ないわ。手術後は体力も弱っていたし、そんなことまで気が回らなかったんでしょう」