「私が先ほど外に出たとき、理不尽な患者の家族たちが玄関に集まっていたわ。あなたを見かけたら、興奮して何をするか分からないから、裏口から出た方が安全だと思います」
青木岑は頷いて、「分かりました。裏口から行きます。ありがとうございます、岡田主任」
「礼なんていいですよ。あまり気を病まないでください。この件は院長も放っておかないはずです。彼らのような騒ぎ方では何も得られませんから」
「はい」
青木岑は荷物をまとめ、山田悦子と一緒に病院の裏口から出た。
岡田主任の先見の明のおかげで、裏口は確かに静かだった。
青木岑は気分が落ち込んでいた。十数分歩いて御苑の自宅に戻った。
まだ早い時間だったので、家には誰もいなかった。西尾聡雄はまだ帰っていないようだ。
青木岑はバッグを置き、疲れた様子でソファに座り、目を閉じて少し休んだ。