第154章:バカンス

「私が先ほど外に出たとき、理不尽な患者の家族たちが玄関に集まっていたわ。あなたを見かけたら、興奮して何をするか分からないから、裏口から出た方が安全だと思います」

青木岑は頷いて、「分かりました。裏口から行きます。ありがとうございます、岡田主任」

「礼なんていいですよ。あまり気を病まないでください。この件は院長も放っておかないはずです。彼らのような騒ぎ方では何も得られませんから」

「はい」

青木岑は荷物をまとめ、山田悦子と一緒に病院の裏口から出た。

岡田主任の先見の明のおかげで、裏口は確かに静かだった。

青木岑は気分が落ち込んでいた。十数分歩いて御苑の自宅に戻った。

まだ早い時間だったので、家には誰もいなかった。西尾聡雄はまだ帰っていないようだ。

青木岑はバッグを置き、疲れた様子でソファに座り、目を閉じて少し休んだ。

そして突然何かを思い出したように、携帯を取り出して熊谷玲子に電話をかけたが、電源が切れていた。

少し焦ってLINEを開くと、すぐに熊谷玲子からのメッセージが目に入った。

「ねぇ、私仕事始めたよ。今日は南地区に飛ぶから心配しないでね」

熊谷玲子が仕事を始めたと知り、青木岑もかなり安心した……

今日病院で起きた出来事を考えると、頭が痛くなった。

あれこれ考えているうちに、夕食の支度の時間を忘れてしまっていた。

西尾聡雄が帰ってきて、ドアの開く音を聞いて、やっと我に返った。

「お帰りなさい。今から夕食を作ります」そう言って青木岑はキッチンに向かおうとした。

西尾聡雄の傍を通り過ぎようとした時、彼に手を掴まれた。

「顔色が悪いね?」

「ああ、今日は少し忙しくて、疲れただけです」青木岑は適当に答えた。

「じゃあ作らなくていい。外で食べよう」

「私は食欲がないから、あなた一人で行ってきて」

「私も特に空腹じゃないから、作らなくていいよ。少し休もう」青木岑が何か言う前に、西尾聡雄は彼女の肩を掴んでソファまで連れて行き、座らせた。

それから西尾聡雄は冷蔵庫からリンゴを取り出し、テレビをつけて適当なチャンネルに合わせた。

その後、スーツの上着を脱いで横に置き、ノートパソコンを取り出して仕事を始めた。

青木岑も食べる気分ではなく、西尾聡雄が渡したリンゴを持ったまま、退屈そうにテレビを見ていた。