「私がそんなに馬鹿だと思うの?」西尾聡雄の一言に青木岑は返す言葉を失った。
彼女も西尾聡雄がお金持ちの馬鹿ではないと思っていた。
事態がここまで悪化している中で、もし金銭で解決するなら、それは彼女が罪人であることを認めることになってしまう。
しかも、あの家族は一億円もの法外な金額を要求してきた。
「吉田院長はどう言ってたの?」
「病院側の対応は任せておけ。余計な心配はするな」
「うん」
「夕方6時に話し合いの約束をしてある。先に家に送って休ませるよ」
「私も一緒に行かせて?」
「必要ない。この件は私に任せておけ」西尾聡雄はきっぱりと断った。
青木岑もそれ以上は主張しなかった。正直なところ、あの人たちと会ってどんな話ができるのかも分からなかった。
でも彼女は西尾聡雄を信頼していた。彼には常に自分なりの原則があったから。