「南環状線のほうでお客さんと会ってくるよ」
「ああ、そうなんだ」青木岑は電話を切り、運転に集中し続けた。
車が南区療養院に入るまで、西尾聡雄は安心して去っていった……
実際にはお客さんと会うわけではなく、青木岑が初めて自分で運転することを心配していただけだった。
青木岑は最初、看護師が車で通勤することが噂になるのではないかと心配していた。しかし南区に着いてから、自分が間違っていたことに気付いた。
なぜなら、他の看護師たちは高級車で通勤していたからだ。BMWやランドローバー、メルセデスベンツGLKなどがあり、それに比べると彼女のフォルクスワーゲンは質素に見えた。
なぜここの看護師たちはこんなにお金持ちなのか?答えは明白で、ここの看護師のほとんどが若くて美しかった。
患者の世話をする際、愛人になるか、もしくは病院で特別なサービスを提供していた。
これは吉田院長でさえコントロールできないことだった。療養区には有力者ばかりで、買う側も売る側も合意の上だったからだ。
すでに成熟した産業チェーンが形成されていた……
もちろん、純粋に看護師として働いている人もいて、そういう人たちは毎日汚くて疲れる仕事をこなし、それほど給料ももらえなかった。
青木岑はそんな不運な看護師の一人で、彼女は階段を上がってから看護師長に報告に行った。
南区療養院の看護師長は30代前半の女で、若くて美しく、胸は少なくとも36Dはあるだろうと見られた。
話し方も優しく……名前も素敵で、細川玲子という。
彼女は言った。「青木さん、あなたのことは聞いていました。ニュースでも見ましたよ。妊婦さんと赤ちゃんを救ったんですよね。すごいです」
「ありがとうございます、看護師長」
「これからここで頑張ってください。ただし、覚えておいてほしいのは、自分が損をしても、ここの患者さんの機嫌を損ねてはいけないということです。これを守れば、給料はかなり良くなりますよ」
この言葉に青木岑は何となく分かったような、分からないような感じだった……
「看護師長、私はどの科に配属されるんでしょうか?」青木岑は早く仕事を始めたくて仕方がなかった。
「整形外科がちょうど人手不足なので、まずはそこで手伝ってもらいましょう」
「はい、では行ってきます」
「ちょっと待って」
「何かありますか?看護師長」