「うん」青木岑は頷いた。
「そうね、あなたはまだ経験が浅いから、もう一人の方の担当をお願いします。あちらのおじいさんは性格が良くて面倒を起こさないから。1号VIPの方は私が担当します」
「はい」青木岑はこの配置に満足していた。これが照子の身勝手な采配だとは知らずに。
「私たちの病棟は今のところ4人だけよ。患者さんが多くないから、それで十分なの。夜勤の看護師は見波さんと美絵さん。交代の時に会えるわ」
「分かりました」
「問題なければ行ってちょうだい。2号室のおじいさんは自宅で転倒して骨折したの。膝に3本のピンが入っているから歩行が不自由で、介助が必要よ。食事は血圧が高いから、肉類は避けて野菜中心にしてね」
「はい」青木岑はこれらを全て心に留めた。
ちょうど回診の時間だったので、直接2号室へ向かった。
おじいさんと数言葉を交わしたところで、隣室からガチャガチャという音が聞こえ、その後泣き声が。
青木岑は興味深そうに病室を出ると、案の定、照子が1号室の前で目を赤くして立っていた。
「どうしたの?」
「何でもないわ。自分の仕事に集中して」照子は多くを語りたくないようだった。
青木岑は興味深そうに1号室のドアを見やってから、自分の仕事に戻った。
2号室のおじいさんは退職した幹部で、以前は警備部の参謀だったという、かなりの実力者だった。
厳格な表情で、青木岑が入室した時は『光劍』の小説版を読んでいた。
「おじいさん、こんにちは。新しく来た看護師です。お薬の時間です」
「珍しく地味な服装の子だね」
老人は青木岑を見てそう言った。
おじいさんにそう言われて、青木岑は自分の制服が他の人と違うことに気付いた。
彼女の制服は第一病院から持ってきたもので、保守的な白衣でダボダボとして、全く魅力的ではなかった。
しかしここの看護師は看護師長の細川玲子を含め、薄いピンク色のワンピースで、特に胸元が大きく開いていた。
少しセクシーな制服という感じ……
おじいさんにそう言われて、青木岑は自分の服装が異質だと感じた。
昼休みの時、看護師長が制服一式を持ってきた。
「どう?慣れた?」
「はい、患者さんの状態も安定していて、回復も順調です」
「それは良かった。制服を着替えてね。ここは第一病院とは違うから」