第184章:酒癖

西尾聡雄が車から降りるまで、青木岑はようやく彼だと気づき、間抜けな笑みを浮かべて「あれ、あなたなの?どうしてここに?」と言った。

西尾聡雄は無言で黒い顔をしたまま、青木岑を抱き上げて助手席に放り込み、シートベルトを締めて車を発進させた。

西尾聡雄が仕事を終えて戻ってきた時には、もう10時近くで、今日は西尾邸にも立ち寄っていた。

父親は最近500億円規模の投資案件に目をつけていたため、西尾聡雄と相談したかったのだ。

結局、父子は意見が合わず話し合いは決裂し、西尾聡雄は出てきた時に青木岑の携帯に電話をかけた。

その時、青木岑はトイレに行っていて、山田悦子が電話に出た。

山田悦子も酔っていたので、もごもごとカラオケの場所を教えてしまった。

それで西尾聡雄はここまで来て、入り口で1時間以上待って、やっと青木岑が出てくるのを見かけた。

自分で歩くのもふらふらなのに、他人のためにタクシーを呼んでやっている余裕があるなんて。

みんなを見送ってから、やっと自分の番?彼の妻は一体どれだけ人助けが好きなんだ?

悪質なタクシー運転手に荒野に連れて行かれて強盗や暴行に遭うかもしれないのに?本当に呆れた。天才と呼ばれているのに?安全意識が全くないのか?以前、テレビで彼女が感動的な謝辞を述べたことで、あの妊婦の夫を許して保険会社の訴訟を取り下げさせたのに。こんなに彼女のことを考えているのに、彼女は酔っ払って猫のようになってしまった。

「まず水を飲んで」西尾聡雄はエビアンミネラルウォーターのキャップを開けて渡した。

青木岑はごくごくと二口飲んで、それからバッと全部吐き出した。

しかも運転席に全部吐いてしまい、西尾聡雄のズボンにまでかかった。

このヴェルサーチの限定版ズボンは十数万円もするのに。

重要なのは、西尾聡雄がこんなに潔癖症なのに、彼女は平気で人の上に吐くなんて?本当にいいのか?

「青木岑!」西尾聡雄は歯を食いしばって叫んだ。

「はい」

「もう、これからは酒を飲むな」半日我慢して、西尾聡雄は何を言えばいいのか分からなかった。

叱りたいけど、忍びない。結局、これからは酒を飲まないように警告するだけで終わった。こんな酒癖の悪さは、本当に目を見開かされた。