第192章:桑原坊ちゃん

青木岑は桑原勝が誰なのか知らなかったため、当然他の看護師さんたちのように怖がることもなかった。

照子は午前中に既に桑原坊ちゃんの恐ろしさを目の当たりにしていた。回診の際に散々怒鳴られ、涙を流してしまったのだ。

もちろん、彼女たちには下心があった。自分の美貌で桑原坊ちゃんの目に留まることを夢見ていたのだ。

そうなれば看護師なんてやってられないじゃない?

噂によると、桑原坊ちゃんのスターキングエンタテインメントは、女優を売り出すのが実に簡単だという。

現在本土で人気の四天王女優のうち二人は桑原勝がプロデュースしたものだ。三文字で言えば—金で押す。

桑原勝はお金を持ちすぎているから、プッシュすればすぐに有名になれる……

看護師たちだけでなく、桑原勝が行く先々で、大勢の女たちが我先にと群がり、色仕掛けをしてくるのだった。

西尾聡雄とは違う。西尾聡雄は控えめで、GKに皇太子がいることは皆知っているが、本人を見たことがある人は少ない。

しかし桑原勝はその正反対で、派手で目立ち、気性が荒く、女を着替えるより頻繁に取り替える。

エンタテインメント会社の社長であるだけでなく、桑原家は多くの経済の命脈を握っており、桑原金融銀行は全国に展開している。

既に5年連続でフォーブス国内ランキングのトップ5に入っている。

青木岑がドアの前に来た時、桑原勝は電話中だった。

彼は長年カーレースをしており、12、3歳の頃から改造車を楽しみ、レースなどで一度も事故を起こしたことがなかった。

今年は運が悪かったのか、山岳コースでレースをしていた際に他の車と衝突し、靭帯を損傷して南部療養所で休養せざるを得なくなった。

ここでは個人の状況に応じて料金が異なる。

桑原勝が入居している1号室は100平米以上のスイートルームで、家電や家具が完備され、ベッドも多機能で伸縮可能だ。

プライベートWiFiが完備され、シーフードもオーストラリアから空輸されたもので、一日の消費額は少なくとも18、9万円とされ、まさにお金を燃やしているようだ。

病室の前には4人のボディーガードが黒いスーツを着て、まるでミイラのように動かずに立っている。

8時間ごとに別の4人と交代する……