一分間悩んだ末、青木岑は階段を上がり、クローゼットを開けると、いつの間にか新しい服がたくさん増えていた。
不思議なことに、西尾聡雄は彼女にこれらのことを一切話さなかった。
色々選んだ末、青木岑はドルチェ&ガッバーナの夏の新作で人気のバラ柄のワンピースを選んだ。
あれこれ考えた末、薄化粧で合わせることにし、足元は白い小さなヒールを履いた。
鏡を見ると、青木岑は随分見栄えが良くなったと感じた。素顔に慣れていたせいか、たまにこうして化粧をすると、自分でも見とれてしまうほどだった。
西尾聡雄は時間に正確で、十分と言えば一分の狂いもなかった。
青木岑が階下に着くと、西尾聡雄の車も到着し、彼は車窓越しに青木岑を見た。
確かに彼は驚かされた。普段は着飾らない彼の妻が、一度着飾ると女優やモデルにも引けを取らないほどだった。
それどころか、青木岑には他人にない独特の雰囲気があった。
助手席で、青木岑は不安そうに尋ねた。「私たち、これからどこに行くの?」
「食事だ。」
「えっと...今日は何か特別な日?」青木岑は突然聞いた。
西尾聡雄は横目で彼女を見て、最後に少し残念そうに「違う」と答えた。
その後二人は黙り込み、プルマンホテル最上階の回転レストランへと向かった。
ここからは街全体の夜景を一望できる。シェフは以前ミシュランレストランの料理長で、西洋料理とデザートが特に得意だと言われている。
しかも、ここの予約は非常に取りにくく、毎晩六組限定で、各テーブル二人までしか受け付けていない。
西尾聡雄と青木岑は夜景が最も美しく見える席に座り、レストラン全体が特別にロマンチックな雰囲気に包まれていた。
店内の隅々までバラの花で飾られ、外国人のハンサムな男性がバイオリンの生演奏をしていた。
「ここ、とても素敵ね。私たちの街にこんな素敵な場所があったなんて知らなかった」青木岑は感嘆した。
西尾聡雄はどこからか小さな錦箱を取り出し、テーブルに置いた。「君へのプレゼントだ」
「何?」
「開けてみれば分かる」西尾聡雄は意味ありげに言った。
青木岑は錦箱を手に取り、ゆっくりと開けると、中にはダイヤモンドリングが収められていた。
「これって...プロポーズってこと?」ダイヤモンドリングを見て、青木岑は顔を上げて西尾聡雄に尋ねた。