「はい」青木岑はゆっくりと立ち上がった。
「おじいさん、ちょっと出てきますね。もうすぐお昼寝の時間ですから、寝る前に血圧の薬を忘れずに飲んでくださいね」
「分かった、午後暇だったら戻ってきて、続きを一緒に遊ぼう」おじいさんは子供のように期待に胸を膨らませた。
青木岑は優しく微笑んで、「はい」と答えた。
部屋を出ると、看護師長の様子がおかしいのに気づいた。「どうかしましたか?看護師長」
「さっき照子が桑原坊ちゃんの病室の掃除に行った時、ドアの外でボディーガードたちが話しているのを聞いたの。坊ちゃんが、あなたを病室に一歩も入れないように命令したって。今夜も点滴があるのに、あなたが入れないと、照子が失敗するんじゃないかって心配で。美絵がもう一度ミスを犯したし、また桑原坊ちゃんの機嫌を損ねたら、私たち全員クビになりかねないわ」