その時、IHクッキングヒーターからピピッと沸騰を知らせる音が聞こえ、青木岑はすぐに西尾聡雄を押しのけて気まずそうに立ち上がった。
「あ...お湯が沸いたわ。鍋を食べに行きましょう」
「ああ」
西尾聡雄は物足りない様子で、欲求不満な表情を浮かべていたが、それでも青木岑の言うことに従った。
夫婦二人で夏の終わりから秋の始めの涼しい季節に、湯気の立つ鍋を囲むのは、とても温かい気持ちになった。
その時、西尾聡雄の携帯が鳴った...
「なんだよ?」
「今仕事終わったんだけど、一杯飲みに行かない?」佐藤然は上機嫌だった。
「行かない」
「なんでだよ?」西尾聡雄がまさかの拒否に、佐藤然は不機嫌になった。
「家で食事中だから」
「ああ、奥さんと一緒なんだ。俺まだ飯食ってないんだけど、じゃあ俺も行って一緒に食べていい?」