第210章:療法

「えっ、それはまずいんじゃない?」青木岑は振り向いて、かなり気まずそうな表情を浮かべた。

朝早くからこんなことに出くわすなんて思いもしなかった。しかも病室で……

桑原勝はそばの美女を苛立たしげに見つめ、「さっさと出て行け」と言った。

「桑原坊ちゃん……?」美女は不承不承といった様子だった。

「早く出て行け、余計な話はいらない」

美女は仕方なく涙を浮かべながら服を着直し、部屋を出て行った。青木岑の傍を通り過ぎる際、彼女を睨みつけた。

まるで自分の邪魔をされたことを責めているかのようだった。

青木岑はその美女を一瞥して、独り言のように呟いた。「あれ?どこかで見たことある顔だわ。旅行チャンネルで毎晩8時にやってる『世界を巡る』の司会者じゃない?」

「外のボディーガードは全員死んだのか?お前を入れるなんて」桑原勝は不機嫌そうに言った。