「えっ、それはまずいんじゃない?」青木岑は振り向いて、かなり気まずそうな表情を浮かべた。
朝早くからこんなことに出くわすなんて思いもしなかった。しかも病室で……
桑原勝はそばの美女を苛立たしげに見つめ、「さっさと出て行け」と言った。
「桑原坊ちゃん……?」美女は不承不承といった様子だった。
「早く出て行け、余計な話はいらない」
美女は仕方なく涙を浮かべながら服を着直し、部屋を出て行った。青木岑の傍を通り過ぎる際、彼女を睨みつけた。
まるで自分の邪魔をされたことを責めているかのようだった。
青木岑はその美女を一瞥して、独り言のように呟いた。「あれ?どこかで見たことある顔だわ。旅行チャンネルで毎晩8時にやってる『世界を巡る』の司会者じゃない?」
「外のボディーガードは全員死んだのか?お前を入れるなんて」桑原勝は不機嫌そうに言った。