西尾聡雄は、青木岑が自分から彼にキスをするとは思ってもみなかったので、頭が反応する暇もなかった。
反応して、キスを返そうとした時には、そのキスはもう終わっていた……
青木岑は彼から離れ、唇の端を舐めた。それは極めて魅惑的だった……
「西尾社長、だから、私、玲子と飲みに行ってもいいですか?」青木岑は西尾聡雄を見つめて懇願した。
「お前の色仕掛けは……かなり手強いな」西尾聡雄は青木岑の顔を見つめながら、一言一言はっきりと言った。
青木岑は思わず声を立てて笑った……
「熊谷玲子に教わったのか?」西尾聡雄は疑わしげに尋ねた。
「彼女が私より頭がいいと思う?」青木岑は反問した。
西尾聡雄は黙り込んだ……
「聡雄……?」
「ん?」
「一度だけ飲みに行ってもいい?たくさんは飲まないから、数杯だけでいい?」青木岑は初めて甘えた声を出した。