夜、青木岑と西尾聡雄はソファーでニュースを見ていた。
突然、臨時ニュースが彼女の注意を引いた。
「先ほど浜松通りと十七番通りの交差点で、重大な交通事故が発生しました。BMWと黒のエンブレムの車が衝突し、両車とも大破。エンブレム車の運転手は逃走、BMW車の女性運転手は第一病院に救急搬送されました。国土交通省が調査に入っており、市民の皆様には夜間の運転時にシートベルトの着用と交通規則の遵守をお願いいたします。」
その後、カメラは事故車両を映し出した……
青木岑はテレビを指差しながら驚いて言った。「あれ、吉田秋雪の車みたい」
「吉田秋雪って誰?」西尾聡雄はまた選択的記憶喪失を発症したかのように聞いた。
「私と仲の悪い醫師よ。寺田徹の新婚の奥さん」
「ああ」西尾聡雄はあまり反応を示さなかった。
しかし青木岑は記憶力が良く、以前第一病院で働いていた時によく吉田秋雪の車を見かけていた。
ナンバープレートも目立つものだったので、一目で分かった。
でも今日は彼女の結婚式の日のはずなのに、どうしてこんな重大な事故に遭ったのだろう?
考えていると、案の定、後輩の山田悦子からLINEが来た。
「先輩、いいニュースがあります。吉田秋雪が事故で入院したんです」
「本当に彼女なの?」
「知ってたんですか?」
「テレビで見たわ」青木岑は返信した。
「はい、めでたい日なのに家にいないで何を調子に乗ってたんでしょうね。ある車と衝突して、相手は逃げたらしいです。しかも******だったそうで、追跡が難しいみたいです。今、吉田秋雪は手術室で救命中です。赤ちゃんが助かるかどうか分からないそうです」
これを聞いて青木岑は心が痛んだ……
どんなに嫌いでも妊婦なのだ。もし子供を失ったら、本当に悲劇だ。
山田悦子とLINEをしている最中、突然寺田徹から電話がかかってきた……
青木岑は少し躊躇してから電話に出た。
「岑、お願いだ。秋雪を助けてくれ」
「今、手術中じゃないの?」青木岑は問い返した。
「でも主治医が出てきて、手術が非常に難しいと言うんです。秋雪は大量出血していて、前回あなたが救った妊婦と同じくらい難しい状態です。医師たちも自信がないので、平野部長があなたに手術の協力を依頼したいそうです」