第248章:敬意を表して

青木岑は西尾聡雄の護送があったため、5分で病院に到着した。

話す時間もなく、すぐに手術着に着替えて手術室に入った。

執刀医は青木岑を見て、少し興奮した様子で「青木さん、やっと来てくれましたね」

「私に任せて」青木岑はメスを受け取りながら、医師から患者の状態を聞き、各種データを確認した。

吉田秋雪の状態は、あの妊婦よりもさらに深刻だった。

あの妊婦は臨月だったため帝王切開で出産できたが、吉田秋雪の胎児はまだ4ヶ月に満たなかった。

中絶すれば赤ちゃんは助からない。かといって中絶しなければ、この手術で使用する様々な薬物も問題となる。

「どうしましょう?先ほど吉田院長から電話があり、二者択一なら母体を優先するとのことでした」

「胎児も4ヶ月で手足も形成されています。中絶すれば患者への負担が大きく、将来の妊娠も難しくなるでしょう」

「はい、それは分かっています。問題は今、母子ともに危険な状態で、吉田先生は頭部に重傷を負い、左側の肋骨が3本折れています。手術は非常に困難です」

時間が切迫している中、青木岑は最終的にデータを総合的に判断し、「平野部長、まず整形外科で肋骨の接合をお願いします。脳については、まず物理的にコントロールして安定を保ちます。私は胎児の保護を優先し、全てのデータが安定してから脳の手術の必要性を判断します。現状では大きな問題はなさそうで、脳震盪のようです。頭蓋内出血でなければ対処できます」

「それで...大丈夫でしょうか?」このような手順は前例がなく、数人の医師も判断に迷っていた。

「これは私の提案です。主治医の皆さんが最終判断をしてください」と青木岑は言った。

最終的に医師たちは頷き、試してみることに決めた...

青木岑は最大限の努力で、吉田秋雪を救命しながら、胎児も守ろうとしていた。

吉田秋雪がこれまで自分に意地悪をしてきた女性だったとは思えないほど、彼女は危機的状況で全力を尽くしていた。

手術は4時間半続き、西尾聡雄は病院の下で車の中で待ち続けていた。

青木岑が疲れ果てて出てきた時、廊下には人が溢れており、先頭には吉田秋雪の両親と吉田院長がいた。

「青木さん、どうでしたか?」