青木岑は西尾聡雄の護送があったため、5分で病院に到着した。
話す時間もなく、すぐに手術着に着替えて手術室に入った。
執刀医は青木岑を見て、少し興奮した様子で「青木さん、やっと来てくれましたね」
「私に任せて」青木岑はメスを受け取りながら、医師から患者の状態を聞き、各種データを確認した。
吉田秋雪の状態は、あの妊婦よりもさらに深刻だった。
あの妊婦は臨月だったため帝王切開で出産できたが、吉田秋雪の胎児はまだ4ヶ月に満たなかった。
中絶すれば赤ちゃんは助からない。かといって中絶しなければ、この手術で使用する様々な薬物も問題となる。
「どうしましょう?先ほど吉田院長から電話があり、二者択一なら母体を優先するとのことでした」
「胎児も4ヶ月で手足も形成されています。中絶すれば患者への負担が大きく、将来の妊娠も難しくなるでしょう」