そのとき、携帯が不適切なタイミングで鳴った……
着信を確認すると、青木岑はすぐに電話に出た。熊谷玲子からの電話はいつもタイミングがいい。
「玲子?」
「ご飯食べた?」
「今食べてるところ」
「もっと早く電話すればよかった。一緒に食べたかったのに」
「何かいいことでもあった?」青木岑は微笑んだ。
「もちろん、車を買い替えたの」
「買い替えたの?そんなに早く?昇給でもあったの?」
「まさか。私のあの程度の給料じゃ、半分増えても大した意味ないでしょ。これはあのお金持ちの息子が買ってくれたの。ベンツのGLK、黒。かっこいいでしょ?」
「うん、じゃあマツダ6は?」
「父に譲ったわ。あの古い現代の車を何年も乗ってたから、そろそろ替え時だったの」
「それはよかったね」
熊谷玲子と色々な話をして、電話を切った時……