第252章:ランプの精

「何よ?」

「聞いてみたいだけ。叶えられるかもしれないから」

「あなた、ランプの精にでもなったつもり?願い事を叶えてくれるって」

「俺様の力を甘く見るなよ。この桑原の名を持つ者だぞ」桑原勝は傲慢に言った。

これは決して嘘ではない。この姓一つで、C市では横暴に振る舞えるのだから。

「嘘つかないと死んじゃうの?」

「お前は初めて俺が嘘つきだと言った奴だな。さあ、俺様に願い事を言ってみろ」

「私の写真を千円札に印刷できる?」

桑原勝:……

「皇居の写真を私と千円札との2ショットに変えられる?」

桑原勝:……

「オバに八重歯の笑顔を見せてもらえる?」

桑原勝:……

「この三つとも叶えられないじゃない。何を偉そうにしてるの。坊や、これからは大口叩く前に自分の器を知りなさいよ」青木岑は桑原勝の肩を叩いて、病室を出て行った。

桑原勝は、青木岑という女は普通じゃない、絶対に普通じゃないと思った。

お礼を言って、プレゼントでもしようと思ったのに、この女とはもう楽しく会話もできなさそうだ。

青木岑は仕事が終わると、私服に着替えてフォルクスワーゲンCCに乗り込み、バックで出て、かっこよく去っていった。

彼女の運転技術はなかなかのものだった。上階で、桑原勝はタバコを咥えながら、白い車が去っていく姿を見て、ふと思いついた……

何かひらめいたようだ……

青木岑が家に着いた時、もう動く気力もなく、ソファーに倒れ込んだ。

そのとき山田悦子から電話があり、吉田秋雪が目を覚まし、脳には今のところ問題がなく、昨夜の手術は成功し、今日のエコー検査でも胎児は正常だと伝えてきた。

青木岑はそれを聞いて、少し口角を上げた。努力が報われた。

西尾聡雄が入ってきた時、青木岑がソファーで丸くなって寝ているのを見た。

彼は近寄って、傍らの毛布を取り、彼女にかけてやった。

そして自分は隣に座って株価の動きを見ていた……

青木岑が目を覚ましたのは既に八時半……

「あ……もうこんな時間。ご飯食べた?」

「夜食のこと?それとも明日の朝食?」

青木岑は頭を掻きながら、キッチンに向かおうとした……

しかし西尾聡雄に腕を引かれ、抱きしめられた……

「最近、すごく疲れてるみたいだね」

「うん、夜勤は眠くて大変」