第251話:プレゼント

指先から漂う香りに、桑原勝は少し衝動的になり、彼女の手の甲にキスしたい衝動に駆られた。

しかし、青木岑のこの荒々しい性格では、彼の手を切り落とされかねないと思った。

そう考えて、少し迷った末、その考えを諦めた……

「熱は下がりましたね。体力はなかなかいいみたいです」

「当たり前だろ。俺は以前数年間特殊部隊員だったんだぞ。俺様を侮るなよ?」

青木岑は黙ったまま、物を片付けて立ち上がった……

「おい、おい、もう帰っちゃうの?」

「熱は下がったんだから、あとはゆっくり休めばOKです」

「でも……今お腹が空いてるんだけど」桑原勝はお腹を押さえながら言った。

青木岑は呆れた目で彼を見つめ、スイートルームのキッチンに行って確認すると、残っているのは全て海鮮だった。

「発熱は体内の寒気が原因なので、この数日間は海鮮類は控えてください。海鮮粥も飲まないでください。食事は薄味にしましょう」

「つまり、そんなに長々と説明して、結局何を作ってくれるの?」桑原勝は期待に満ちた目で青木岑を見つめた。

青木岑はため息をつき、ここまでやったんだから最後までやろうと決めた……

こんな深夜にキッチンに頼むのは調理師に迷惑をかけるし、作られた物も薄味とは限らない。

青木岑は棚から米を取り出し、ネギと生姜を刻んで、桑原勝のために粥を作り始めた。

40分後、湯気の立つ寒気払いの粥が出来上がった……

「はい、これを飲んでください。体に良いですよ」

「精力増強効果はある?」

「陰を潤す効果ならありますよ」青木岑は顔を曇らせて答えた。

桑原勝は噴き出して笑った。深夜に青木岑をからかうのは、人生の大きな楽しみの一つだった。

「君はそんなに怖くて、優しくもなくて、ブスだから、誰も貰い手がないよ」

「ご心配なく。私のことは気にしないでください。あなたこそ、これからは節制して、後で不能にならないように気をつけてください」

「ちっ……口が毒だな」

「黙って、早く粥を飲んでください」青木岑の桑原勝への忍耐は限界に達していた。

たまたま彼女の当直の時に、この方が熱を出してしまい、熱を下げなければ、明朝には病院が大混乱になるだろう。

桑原奥さんが看護師長を泣かせることになるかもしれない。