第263章:いわゆる「情けは人の為ならず」(5)

「あなた……?」明らかに、平野照子は怒りを覚えていた。

「照子さん、人というのはそういうものよ。あなたが私を一尺敬えば、私もあなたを一丈敬う。あなたの気持ちは分かるわ。でも昇進は私が何か策を弄したわけじゃなくて、病院の決定なの」

「それだって吉田院長があなたを贔屓してるからでしょう?みんな言ってるわ、あなたが以前第一病院にいた時から、吉田院長と関係があったって」

平野照子も怒りのあまり、口が滑ってしまった。

「物事は適当に食べても構わないけど、言葉は慎重に選ばないと。そんなに詳しく言えるなら、証拠でもあるの?それに、もし私が本当に吉田院長と何かあったのなら、こんな看護師長なんてしてると思う?」

「それはわざとらしく見せかけてるんでしょう」

「私は説明する気はないわ。とにかく...私たちがうまく付き合えるなら同僚として接するけど、もしあなたが私を受け入れられないなら、毎日悪口を言うことで気が済むなら、そうすればいいわ。でも...これからはあなたが当直の時に、私に助けを求めないで。一度も手伝わないから」