第262章：いわゆる「情けは人の為ならず」（4）

「そうよ、知らなかったの？私たちはもう知ってたわ。あなた本当に情報に疎いのね」

「えっと...私は確かに知りませんでした」

青木岑は病院の噂話にはあまり関心がなく、自分の担当区域の患者の世話だけに専念していたので、情報に疎いのは当然だった。

「今度は気をつけなきゃね。あなたの同僚の平野照子はきっと怒り狂うわよ。彼女は何度も申請したのに通らなかったのに、今回突然あなたが昇進するなんて、きっとあなたのことを快く思わないでしょうね」

「そうね、照子と見波は違うのよ。見波はお金目当てで、金持ちの旦那さんを釣って、病院に長く居るつもりなんてないけど、照子は違うわ。彼女は権力に執着があって、出世したがってるから、気をつけた方がいいわよ」

そう言って、数人の看護師さんたちはクスクス笑いながら去っていった...

実際、青木岑は彼女たちとそれほど親しくなかった。ただ近くにいて、時々手伝いに行く程度だった。

整形外科にいる本当のスタッフは、照子と見波、そして以前の美絵だけだった。

美絵が怪我をした後、他の科から異動してきた平野明音が代わりに入った。彼女は無口で、青木岑とはあまり接点がなかった。

そう考えていると、細川玲子看護師長が突然近づいてきた。「青木岑さん、ちょっと来てください」

診察室にて

「青木岑さん、もう知っているでしょうけど、あなたの昇進について、病院は正午に正式な通達を出します」

「昇進ですか？」青木岑はまだ混乱していた。

「そう、今日からあなたは整形外科の看護師長よ」

「では、細川さんは？」青木岑は驚いて聞いた。

細川玲子は微笑んで、「私は財務部の監督に異動になったの」

「それは良かったですね、おめでとうございます」

「ありがとう」細川玲子は明らかに上機嫌だった。

「あなたの今回の昇進には二つの理由があるわ。まず一つ目は、担当患者さんたちからの推薦があったこと。特に2号室の大石爺さんがあなたのことをとても褒めてくれたわ。桑原坊ちゃんの方は特に何も言わなかったけど、評価表ではAをつけてくれた。あなたの仕事ぶりに満足していたのが分かるわ。あなたが来てからの仕事ぶりも素晴らしく、私も評価表でAをつけたわ。でも一番大きな理由は吉田院長が強く推薦してくれたからよ」

「吉田院長が？」