青木岑は唇を噛んで、顔を上げて言った。「あなたはとても素敵な方ですが...私には彼氏がいるんです。」
「え?」四角顔くんは呆然とした表情を浮かべた。
「昨日お話ししようと思っていたんですが、大石爺さんが機会をくれなくて、申し訳ありません。」
「いいえ、今言ってくれても遅くないです。正直に話してくれてありがとう。」
「人として正直であるべきですよね。もしご迷惑をおかけしたのなら、本当に申し訳ありません。」
「いいえ、私たち大石家の男は、浮気者でもなければ、下品でもありません。寛容な心は持っているつもりです。」
青木岑:……
四角顔くんは口べたではあったが、前回の検視官のように気取ってはいなかった。しかし、彼もまた変わった人で、発する言葉の一つ一つが印象的で、青木岑は思わず笑いそうになった。
二人が話を終えて帰ろうとした時、玄関で思いがけず桑原勝と出くわした。
「お見合いの...相手?」
桑原勝は散歩中に、おしゃべりな看護師さんたちが青木岑のお見合いについて内緒話をして笑っているのを耳にしていた。
怒りで散歩する気分も失せ、裏庭へ直行した...
青木岑が答える前に、桑原勝は四角顔くんの軍服の肩章をちらりと見て嘲笑した。「たかが中隊長か?」
「はい、中隊長です。」四角顔くんは頷いた。
「あの、ちょっと...」青木岑は見かねて、何か言おうとした。
しかし桑原勝は命知らずにもさらに言い放った。「一介の中隊長が南区で女を口説こうだなんて?何を根拠に自信持ってるんだ?ここの入院患者の一か月の収入が、お前の一生分の稼ぎより多いかもしれないことも知らないのか?」
「桑原勝...あなた度が過ぎます。」青木岑は顔を曇らせて警告した。四角顔くんは大石爺さんの孫なのに、なぜこんな皮肉を言うのだろう。
「青木岑さん、この人があなたの彼氏なんですね。でも...彼との関係を続けるかどうか、もう一度考え直した方がいいと思います。器の小さい男に大きな発展は望めませんから。」
そう言い終えると、四角顔くんは青木岑に会釈して去っていった...
普通なら、こんな言葉を言われた桑原勝は激怒するはずだった。しかし今日は特別に落ち着いていた。
なぜなら、あの若者が自分を青木岑の彼氏だと勘違いしたことが、とても嬉しかったからだ。