「もちろん違うよ。岑は僕の妹だから」
「実の妹じゃないけどね」桑原勝が的確に指摘すると、青木重徳の瞳に何かが一瞬よぎった。
「考えすぎですよ、桑原様。私の好みは岑のようなタイプじゃありません」
「ああ、お前の好みはDカップ以上だったな」
「はは、さすが分かってますね」
その後、青木重徳と桑原勝は雑談を続け、青木岑の話題には触れなかった……
しかし、お互いに何かを察知していた。
青木重徳は、桑原勝が青木岑に本当に興味を持っていることに気付いた。
彼が来た時、桑原勝のスマートフォンをちらりと見たところ、青木岑の写真が映っていたからだ。
すぐに戻るボタンを押したものの、彼はそれを確かに見た。
一方、桑原勝は、青木岑の話題が出るたびに、青木重徳の表情が多少なりとも落ち着かなくなることに気付いた。
彼は感情を必死に隠そうとしていたが。
しかし桑原勝とは何者か?彼は金持ちのバカ息子ではない。特殊部隊員として何年も実戦経験を積んできた。
特殊部隊で鍛え上げられたエリートで、その身体能力も頭脳も一流だった。
彼の鋭い直感で、青木重徳の青木岑に対する思いが、単純なものではないことを感じ取った。
それは妹に対する普通の感情ではなかった……
青木岑の昇進の件は実はとても控えめで、病院の人々以外には西尾聡雄にちょっと話しただけだった。
しかしその一言で、西尾聡雄はすぐに七里の香りで火鍋の席を予約した。
七里の香りの火鍋は麻辣で有名で、スープのベースが新鮮で辛くて美味しく、人気が非常に高い。
また、ここは高級店で、牛肉さえも牧場で特別に放牧された上質な牛肉を使用している。
そのため、一回の火鍋で一万元以上かかるという……
西尾聡雄は火鍋を予約しただけでなく、自ら進んで佐藤然と熊谷玲子も誘ってくれた。
そして、四人が再び集まって食事をする時、雰囲気は一変した。
「おや、車を変えたのか。また新しい男でも作ったのか」
「あんたに関係ないでしょ?」熊谷玲子は佐藤然を睨みつけた。
「ただ不思議に思っただけさ。どんな目の不自由な男があんたを選ぶんだってね」
「目の不自由な男なんて沢山いるわよ。私がどんなに悪くても、あんたよりはマシよ。いい年して独身、一生独身、自業自得ね」