第272章:彼女はあなたが触れられる女ではない(9)

南区看護師長になってから、仕事がますます忙しくなり、他の科からも手伝いを頼まれることが多くなった。

彼女は医術が優れていて、仕事に真面目だと評判で、そのため青木岑のプライベートな時間がますます少なくなっていった。

西尾聡雄は何度か抗議したが、彼女の甘えに負けてしまった。

やっと週末になり、休みを取って西尾聡雄とゆっくり過ごそうと思ったのに、西尾様は今日も残業だった。

朝の掃除をしている時、テレビでGK西部地域ウォームホテルの開業式のニュースを見た。

多くの人が見物に来ていて、大盛況で、現場は某大スターの映画発表会のようだった。

そこで青木岑はふと思いつき、西尾様にサプライズを贈ろうと考えた。

クローゼットから黒のナイキのスポーツウェアを取り出し、白い野球帽をかぶると、たちまち学生時代に戻ったような気分になった。

それから白いマスクを付け、変装して開業式の会場へ向かった。

群衆の中に紛れ込み、スマホで西尾聡雄の写真を撮ろうとしたが、それは簡単なことではなかった。

周りは人でいっぱいで、多くの女の子たちが彼女の西尾様のことを「ダーリン」と叫んでいて、呆れてしまった。

開業式が終わり、西尾聡雄がホテルのロビーに入るのを見た青木岑は、こっそりと後をつけて入っていった。

西尾聡雄が秘書と共に休憩室に入ろうとした時、青木岑は前にいた数人を押しのけた。

突然駆け寄り、西尾聡雄の手を掴んで「西尾社長、一緒に写真を撮っていただけませんか?」と言った。

西尾聡雄は声を聞いて一瞬驚いた様子を見せた……

そのすきに、どこからともなく4、5人のボディーガードが現れ、すぐさま青木岑を取り押さえた。

そして外に連れ出そうとする勢いで引きずっていった……

両手を押さえられ、マスクも取れず、本当に困ってしまった……

その時、西尾聡雄が突然「彼女を放せ……」と叫んだ。

「社長、……これは危険な熱狂的ファンかもしれません」と永田さんが注意を促した。

「彼女を放して、中に入れなさい」と言って、西尾聡雄は休憩室に入っていった。

青木岑は目を丸くした。なぜ西尾聡雄が突然そんなことをするのか、私だと分かったのだろうか?

まさかそんなはずない、こんなにもしっかり包んでいるのに……これは科学的に説明がつかない。