第291章:そんなに怖いの、お母さん知ってる?(8)

「大丈夫よ、ただ聞いてみただけ」

「彼女がどう思おうと、それは彼女の問題。私がどう思うかは、私の問題だ」

明らかに、笹井春奈は西尾聡雄にとって、ただの通りすがりの人に過ぎなかった……

「うん、彼女はあなたのことをとても気にかけているみたい。今日私が帰るとき、わざとエレベーターの前で待ち伏せして、いろいろ質問してきたの」

西尾聡雄は眉をしかめ、不快感を示した……

「でも何も聞き出せなかったわ。私は何も話さなかった」

「今後は会社の人たちのことは気にしなくていい」

「わかってる」青木岑はうなずいた。

翌朝、青木岑が目を覚ましたとき、遅刻しそうになっていた。

「どうして起こしてくれなかったの?」

「気持ちよさそうに寝てたから」

「もう、でも遅刻しちゃうわ」

「大丈夫、送っていく」西尾聡雄は青木岑の車が戻ってくるまでは、送り迎えをしようと決めていた。そのほうが安心だった。