「大丈夫よ、ただ聞いてみただけ」
「彼女がどう思おうと、それは彼女の問題。私がどう思うかは、私の問題だ」
明らかに、笹井春奈は西尾聡雄にとって、ただの通りすがりの人に過ぎなかった……
「うん、彼女はあなたのことをとても気にかけているみたい。今日私が帰るとき、わざとエレベーターの前で待ち伏せして、いろいろ質問してきたの」
西尾聡雄は眉をしかめ、不快感を示した……
「でも何も聞き出せなかったわ。私は何も話さなかった」
「今後は会社の人たちのことは気にしなくていい」
「わかってる」青木岑はうなずいた。
翌朝、青木岑が目を覚ましたとき、遅刻しそうになっていた。
「どうして起こしてくれなかったの?」
「気持ちよさそうに寝てたから」
「もう、でも遅刻しちゃうわ」
「大丈夫、送っていく」西尾聡雄は青木岑の車が戻ってくるまでは、送り迎えをしようと決めていた。そのほうが安心だった。