青木岑は桑原勝を無視して、タクシーを拾って去ってしまった……
桑原勝は朝から青木岑と一緒にいたことで、とても上機嫌だった。
ゴルフ場
数人の若い金持ちが女性を連れてゴルフをしていたが、桑原勝だけが一人だった。
「珍しく一人だね。どうしたの?最近は精進料理?」青木重徳が笑いながら言った。
「そうさ、肉ばかり食べていたから、たまには控えめにしないとね」桑原勝は笑った。
「機嫌がいいようだけど、うちとの提携関係を元に戻す気はない?お金に背を向けるのもどうかと思うけど?」談笑の中で、青木重徳は提携解消の件について切り出した。
桑原勝は携帯をいじりながら、無関心そうに答えた。「お前の頭の悪い妹を追い出したら、また提携の話をしよう」
青木重徳は肩をすくめた。「青木婉子がバカなことをしたのは分かってたよ。お前のベッドに上がりたかったんだろう」
「俺のベッドに上がりたがる女なんて山ほどいる。彼女なんて大したことない」桑原勝は嘲笑した。
「じゃあ、うちの岑はどう?彼女とは寝たの?」青木重徳は突然青木岑の話を持ち出した。
桑原勝はようやく真剣な表情になり、手の携帯をコーヒーテーブルに置いた。
「青木岑――必ず手に入れる」
「そう?じゃあ、おめでとう」青木重徳はグラスを掲げた。
桑原勝は黙ったまま、口角を少し上げた……
今朝、青木岑が去る時に彼の車を蹴った姿を思い出し、その可愛らしさに胸が高鳴った。
こんなに面白い女がいるだろうか?青木岑の一蹴りで修理費15万円かかったけど。
でも彼はそれでも得をしたと感じていた。少なくとも青木岑と朝の時間を二人きりで過ごせたのだから。
どう考えても損はしていない。
その時、携帯が鳴った。桑原勝は画面を見ると、岩本奈義からの着信だった。
彼は完全に無視して、ミネラルウォーターを一口飲んだ。
「おや、岩本さんはクビになりそうだね。電話も取らないなんて」矢野川が笑いながら聞いた。
桑原勝は何も言わなかった……
「最近、綿菓子って新人を推してるって聞いたけど?腰細くて胸大きいんでしょ?楽しんでる?」矢野川は続けて聞いた。
「欲しいなら、やるよ」
「本当に?」
「ああ、本当だ」桑原勝はその綿菓子のことをもう覚えていなかった。どんな顔だったかも思い出せない。