第288章:そんなに怖いの、お母さん知ってる?(5)

青木岑は桑原勝を無視して、タクシーを拾って去ってしまった……

桑原勝は朝から青木岑と一緒にいたことで、とても上機嫌だった。

ゴルフ場

数人の若い金持ちが女性を連れてゴルフをしていたが、桑原勝だけが一人だった。

「珍しく一人だね。どうしたの?最近は精進料理?」青木重徳が笑いながら言った。

「そうさ、肉ばかり食べていたから、たまには控えめにしないとね」桑原勝は笑った。

「機嫌がいいようだけど、うちとの提携関係を元に戻す気はない?お金に背を向けるのもどうかと思うけど?」談笑の中で、青木重徳は提携解消の件について切り出した。

桑原勝は携帯をいじりながら、無関心そうに答えた。「お前の頭の悪い妹を追い出したら、また提携の話をしよう」

青木重徳は肩をすくめた。「青木婉子がバカなことをしたのは分かってたよ。お前のベッドに上がりたかったんだろう」

「俺のベッドに上がりたがる女なんて山ほどいる。彼女なんて大したことない」桑原勝は嘲笑した。

「じゃあ、うちの岑はどう?彼女とは寝たの?」青木重徳は突然青木岑の話を持ち出した。

桑原勝はようやく真剣な表情になり、手の携帯をコーヒーテーブルに置いた。

「青木岑――必ず手に入れる」

「そう?じゃあ、おめでとう」青木重徳はグラスを掲げた。

桑原勝は黙ったまま、口角を少し上げた……

今朝、青木岑が去る時に彼の車を蹴った姿を思い出し、その可愛らしさに胸が高鳴った。

こんなに面白い女がいるだろうか?青木岑の一蹴りで修理費15万円かかったけど。

でも彼はそれでも得をしたと感じていた。少なくとも青木岑と朝の時間を二人きりで過ごせたのだから。

どう考えても損はしていない。

その時、携帯が鳴った。桑原勝は画面を見ると、岩本奈義からの着信だった。

彼は完全に無視して、ミネラルウォーターを一口飲んだ。

「おや、岩本さんはクビになりそうだね。電話も取らないなんて」矢野川が笑いながら聞いた。

桑原勝は何も言わなかった……

「最近、綿菓子って新人を推してるって聞いたけど?腰細くて胸大きいんでしょ?楽しんでる?」矢野川は続けて聞いた。

「欲しいなら、やるよ」

「本当に?」

「ああ、本当だ」桑原勝はその綿菓子のことをもう覚えていなかった。どんな顔だったかも思い出せない。