第289話: そんなに怖いの、お母さん知ってる?(6)

「そんなことないわ。なんでそんな悪く思うの」青木岑は口を尖らせ、困ったような表情を浮かべた。

「じゃあ、まず教えて。なぜ仕事に行かなかったの?」西尾聡雄は朝、彼女と一緒に出発したことを覚えていた。

この時間、彼女は南区病院にいるはずじゃないのか?

「私は...ごほんごほん、言うから、怒らないでね」

「話せ」

「まず許してくれないと」

「何をしたのかも知らないのに、どうやって許せるんだ?」

「許してくれないなら、絶対に言わないわ。死んでも言わない」青木岑は、自分が事故に遭ったことを直接言えば、西尾聡雄が怒るかもしれないと思った。彼は常に彼女の身の安全を気にかけていたから。

「わかった。許す」

「本当?」青木岑は明らかに信じていなかった。

「本当だ」

「嘘ついたら犬になるよ」