第305章:この女があまりにもわがまま(12)

月下クラブ

市内最大のナイトクラブで、最も高級な娯楽施設でもある。訪れるのは上流社会のお坊ちゃまや令嬢たちばかりだ。

ここでは、一晩で数百万円を使い果たすのも珍しくない。驚くことではないのだ。

熊谷玲子は、金持ちの二世である多田広と付き合い始めてから、よく彼と一緒に遊びに来るようになった。

しかし玲子は多田の交友関係が好きではなかった。複雑すぎると感じていた。金持ちの世界は一般人のように単純ではないのだ。

多くの場合、それは汚れた世界だった。実際、玲子も多田のことをそれほど好きではなかった。ただ、多田は気前がよく、彼女に優しかったので、普通に付き合いを続けられれば、結婚も不可能ではないと考えていた。

玲子は仕事を終えて休もうと思っていたが、多田から立て続けに3回も電話があり、月下クラブに呼び出された。