第298章:この女があまりにもわがまま(5)

「奥様はお部屋で、具合が良くないようです」

西尾聡雄は笹井春奈を無視して、二階にある母の寝室へと向かった。

部屋に入ると、母が貴妃椅子に寄りかかり、毛布で体の半分を覆い、顔色も良くなかった。

「お母さん、どこが具合悪いの?」

「心が苦しいのよ」胸を指さしながら、西尾奥さんは冷たく言った。

西尾聡雄は母が不機嫌なのを察し、椅子を引いて母の向かいに座った。

「お母さん、こんな夜中に僕を呼び戻して、一体何がしたいの?」

「あなたは私の息子よ。会いたくなったの。それもダメなの?」

「そういう意味じゃないよ。ただ、子供みたいに病気のふりをする必要はないでしょう」

「病気のふりなんかしてないわ。本当に心が痛いの。今日、夕食に帰ってくるって約束したでしょう?なぜ約束を破ったの?春奈さんを一晩中待たせることになったじゃない。GKの最高経営責任者なら、約束は守るべきでしょう?」