「どこから来た狂った女だ、頭がおかしいのか?」多田広は殴られ罵られ、完全に混乱していた。
酒を飲みすぎて、はしゃぎすぎて、熊谷玲子が彼に青木岑という親友がいると話していたことを、すっかり忘れていた。
青木岑という人物についても全く記憶がなかった……
その後、青木岑は構わず長田輝明の側に歩み寄り、彼の腕の中からぼんやりとした熊谷玲子を引き出した。
「玲子、行きましょう」
「待て」長田輝明の表情が暗くなった。
青木岑は全く足を止めず、個室のドアに向かって歩き出したが、長田輝明の部下に阻まれた。
「俺の腕から人を奪うとは、俺を馬鹿にしているのか?」長田輝明は丁度良い気分だったのに、こんな素晴らしい雰囲気を台無しにされて、気分が良いはずがなかった。
「玲子は私の親友よ。彼女が迎えに来てと言ったから、連れて帰るわ。それだけのこと」