桑原勝も黙ったまま、青木岑の清秀な横顔をじっと見つめ、その深い眼差しからは何を考えているのか読み取れなかった。
青木岑は急いで出てきたため、夜風も強かったので、シンプルなカジュアルウェアしか着ていなかった。
白黒の組み合わせは地味なはずなのに、彼女が着ると不思議とお嬢様のような雰囲気を醸し出していた。青木岑の持つ気品は、普通の人にはない特別なものだった。
髪も簡単にポニーテールに結んでいただけで、とても若々しく見えた。
確かに装いはシンプルだったが、当時は緊急事態で、手当たり次第に着たものだった。見た目など気にしている場合ではなかった。
それなのに桑原勝はそんな姿が特に好きで……
今夜の青木岑が、特別に美しく見えた……
結局のところ、桑原勝が心を奪われていたからこそ、青木岑が綿入れの上着に綿入れのズボンを着ていても、きっと美しく見えたことだろう。
まさに情人眼里出西施という言葉そのものだった……
「お嬢ちゃん、抵抗しても無駄だよ。お兄さんが怒る前に、大人しく来なよ。でないと……お兄さんが怒ったら、後が怖いぞ」
長田輝明はまだ我慢強く、妹と呼び続け、青木岑は背筋が凍る思いだった。
熊谷玲子を抱えていなければ、このクズ野郎を蹴り殺してやりたかった。
本当に吐き気がするほど気持ち悪かった。
こんな奴が南区の療養所に入ってきたら、即座に針で刺して不具にしてやる。容赦なんかしない。
「私に手を出したら後悔することになるわ。さっさと消えなさい」
青木岑はもう時間を無駄にしたくなかった。最後の警告を発した……
「おやおや、可愛い子ちゃん、怒っちゃったの?どんな後悔をするのか見てみたいもんだな」
長田輝明からすれば、これは若い女の最後のあがきに過ぎず、まったく取るに足らないものだった。
むしろ征服欲をさらに掻き立てられた……
長田輝明は上着のTシャツを脱ぎ、上半身を完全に露わにした。
「おっ、長田坊ちゃんが本気モードだぜ」周りの誰かが煽り立てた。
その後、拍手する者、口笛を吹く者が現れ、まるで猿回しを見るような態度で騒ぎ立てた。
青木岑はこのような場面が極端に嫌いで、すでに対策を考えており、この対峙を早く終わらせようと思っていた。
関口遥は落ち着かなくなった。桑原勝が全く手を出す様子を見せないからだ。
これはおかしいだろう?