桑原勝も黙ったまま、青木岑の清秀な横顔をじっと見つめ、その深い眼差しからは何を考えているのか読み取れなかった。
青木岑は急いで出てきたため、夜風も強かったので、シンプルなカジュアルウェアしか着ていなかった。
白黒の組み合わせは地味なはずなのに、彼女が着ると不思議とお嬢様のような雰囲気を醸し出していた。青木岑の持つ気品は、普通の人にはない特別なものだった。
髪も簡単にポニーテールに結んでいただけで、とても若々しく見えた。
確かに装いはシンプルだったが、当時は緊急事態で、手当たり次第に着たものだった。見た目など気にしている場合ではなかった。
それなのに桑原勝はそんな姿が特に好きで……
今夜の青木岑が、特別に美しく見えた……
結局のところ、桑原勝が心を奪われていたからこそ、青木岑が綿入れの上着に綿入れのズボンを着ていても、きっと美しく見えたことだろう。