第367章:彼女は既婚者だった(9)

「応援するわ、絶対に応援するわ。男性が好きでも構わないから、ただ一人でいいから孫を残してちょうだい。桑原家の血筋が途絶えないように。誰を愛そうと母さんは気にしないわ」

桑原勝は即座に冷や汗を流した……

「さすが実の母親ですね、携帯料金の特典でついてきた母親じゃないですよ」

「どうなの?最近好きな女の子でもいるの?」

「えーと……一人います」

「何をしている子?年はいくつ?どんな顔?写真はある?」桑原奥さんは即座に興味を示した。

「母さん……今はお話しできないんです。機会があれば、必ずお話ししますから」

「なんだか神秘的ね。まあいいわ。でも、もう若くないんだから、もう遊び半分はダメよ。会社のタレントたちとは、きっぱり縁を切りなさい。お爺様も言ってたでしょう。芸能界の人間は絶対に桑原家には入れないって」

「分かってます」桑原勝は頷いた。

「今夜は家に泊まる?部屋の準備をさせましょうか?」

「いいえ、母さん。自分の家に帰ります」母親と少し座って話した後、桑原勝は深夜にまた出て行った。

散々騒がせたが、桑原家はもうこの御曹司の性格に慣れていた。

翌朝

青木岑は出勤途中に、佐藤然からLINEを受け取った。

「青木さん、いますか」

「はい」

「熊谷玲子はどうなってるんですか?」

「どうかしたんですか?」

「LINEでブロックされました」佐藤然は泣き顔のスタンプを送った。

「えーと……なんで?」青木岑は全く理解できなかった。

「私も知りたいですよ。彼女、気が狂ったんですかね?なんで私をブロックするんですか?」

「ブロックされたのは確実?削除じゃなくて?」

「それに違いがあるんですか?」佐藤然は泣き顔のスタンプを送った。

「違いますよ。ブロックは完全にメッセージを受け付けない、あなたが何か彼女を怒らせることをしたってことです。削除は付き合いたくないから、完全に無視するってことです」

「青木美人様、さすがの分析ですね」

「で、教えてくれます?結局ブロックなのか削除なのか」青木岑はイヤホンをつけながら音声メッセージを返信した。

「ブロックです」

「ははは……早く話してください、一体彼女に何をしたんですか」

青木岑は非常に楽しそうに笑った。初めて佐藤然のこんな狼狽した一面を見た。

「何もしてないんですけど、信じてくれますか?」