「佐藤然さんが、あなたに連絡できないって言ってたわ。WeChat でブロックされたって」
「そうよ、何か問題でも?」熊谷玲子は堂々と答えた。
「別に問題はないけど、佐藤然さんがあなたに連絡取れなくて私に聞いてきたのよ。一体どうしたの?どうしてこんなことになったの?」
「別に、ただ彼のことが気に入らないだけよ」
「気に入らないなら、もっと早くブロックすればよかったじゃない。どうして彼の彼女が来た日を待ってブロックしたの?ねぇ、あなた、その警察官のことが気になってるんじゃないの?」
「馬鹿言わないで、そんなことないわ」熊谷玲子は即座に否定した。
「はいはい、強がり続けてればいいわ」
「もう、私たちのことは一言二言では説明できないのよ。明日休み?」
「うん、今日は夜勤だから、明日は丸一日休みよ」
「じゃあちょうどいいわ。二人で買い物でも行って、ご飯食べましょう。最近気分が優れないから、話し相手になってほしいの」
「いいわよ。でも、あまり早くしないでね。今夜帰ってから少し寝たいから、お昼にしましょう。レストラン決まったら電話して」
「どうして私がレストラン決めるの?あなたが払うんじゃないの?」熊谷玲子はわざと聞いた。
「そうよ、私が払うけど、レストランは選んでもいいでしょ」
「さすが金持ち、お金持ちの友達で良かった」熊谷玲子はくすくす笑った。
「やめてよ、佐藤然さんの方が太い足よ。彼女と別れたって聞いたわ、ちょうどいいタイミングじゃない」
「別れたの?まさか」熊谷玲子は明らかに信じていなかった。
「西尾聡雄から聞いたの。うちの西尾様が言うことに嘘はないわ、保証付き」
「でも、どうして別れたの?」熊谷玲子は興味深そうに聞いた。
「それは佐藤然さんに直接聞いてみたら?」
「彼なんか相手にしたくないわ。じゃあ、明日連絡するわね」そう言って、熊谷玲子は電話を切った。
夕食後、勤務まであと30分、青木岑はオフィスに戻って机の整理をした。
それから病室を回って、各病室の状態を確認しようと思った。
そのとき、携帯が鳴った。ビデオ通話の着信だった。
「こんにちは、西尾様」通話をつなぐと、青木岑は微笑んだ。
こちら側の青木岑は相変わらず白衣姿で、黒縁メガネをかけ、すっぴんの愛らしい顔。