第385章:千佐子の蜜月(7)

四十五度の天然温泉の中で……

二人きりで、静かに抱き合いキスをしていた……

山の上では時折、大きな雪の花びらが舞い落ちてくる……

温泉の縁に置かれた高級オーディオ機器からは、ディズニーの名作アニメ『アナと雪の女王』の英語版主題歌『Let It Go』が流れている

この温かな光景を、青木岑は一生忘れることはできないだろうと思った……

何年経っても、この場面を思い出すたびに、涙が溢れてくるに違いない。

西尾聡雄は、彼女の少女時代の何気ない一言を夢にするために、どれほどの心遣いをしたのだろう。

それは七年前のことだった……

二人でスキー場に遊びに行った時、青木岑はこう言った。「もし私たちに自分のリゾート施設があったらいいのに。白い雪をテーマにして、温泉があって、スケートリンクがあって、温泉に浸かりながら頭上に雪が舞っているの。わぁ、考えただけでも最高!できれば雰囲気に合った音楽も流れていて、そんな光景、想像するだけでもロマンチックだわ」

「いつかそういう日が来るさ」西尾聡雄はその時、そっとそう言っただけだった。

青木岑も特に気にとめていなかったし、七年経った今では、その出来事すら忘れていた。

西尾聡雄は苦心して、彼女の夢とも思っていなかった夢を叶えてくれた……

しばらくして、西尾聡雄は名残惜しそうに青木岑を放した……

そして二人は杯を合わせ、赤ワインを少しずつ飲んだ……

夕食の時間になって、温泉の責任者が慎重に近づいてきて、「西尾社長、奥様、お食事の準備が整いました。15階へご案内させていただきます」と告げた。

西尾聡雄は頷き、その後青木岑の手を引いて温泉から出て、白いバスタオルを彼女に掛けた。

イブニングドレスに着替えた後、二人一緒にホテル内に戻った。

西尾聡雄の部下たちは仕事が非常に確実で、社長と奥様が夕食を取ると聞いて。

用意した衣装はすべてディナーパーティーにふさわしいもので、西尾聡雄はスタイリッシュな黒のフィットスーツ。

青木岑は白のイブニングドレスで、ベアトップ、鎖骨のところに精巧な牡丹の花が咲き、デコルテを上品に隠している。

白いハイヒールと合わせて、まさに気品が溢れていた……

スイートルームで着替えを終えた青木岑は、ゆっくりと歩き出した。普段あまりハイヒールを履かないので、転ばないように気を付けていた。