「うん、そうね。東京に行かなきゃ。こんなにモヤモヤしたままじゃいけないわ」
緊張しすぎて思考力を失っていたのか、青木岑にそう言われて、吉田秋雪の気持ちは少し落ち着いた。
「この数日間は毎日******の注射で胎児を安定させましょう。食事にも気をつけて。それと...しばらく仕事は休んで、自宅で安静にしてください。体力が少し回復したら、すぐに東京へ行きましょう。いいですか?」
「はい」吉田秋雪は青木岑の提案がとても良いと思い、頷いた。
昨夜の一連の検査は、深夜の12時半までかかった。
青木岑は吉田秋雪を車で家まで送り、それから帰宅した。
家に着いたのは1時近く、疲れ果てた体で浴室に入り、熱いシャワーを浴びた。
出てきたとき、吉田秋雪からメッセージが届いているのに気付いた。
「ありがとう、青木岑。今日はあなたが一緒にいてくれて本当に良かった」
青木岑は微笑んだだけで返信はしなかった。遅い時間だったので、吉田秋雪の休息を邪魔したくなかったからだ。
吉田秋雪は面子を保ちたくて、同僚たちに知られたくないし、第一病院にも行きたくないと言っていた。青木岑にはその気持ちがよく分かった。
だって、彼女はプライドの高い人だから...
午前1時半、青木岑が全ての片付けを終えて寝ようとした時、鍵を開ける音が聞こえた。
すぐに立ち上がって寝室のドアの後ろに隠れ、西尾聡雄を驚かせようと準備した。
案の定、しばらくすると西尾聡雄は直接2階に上がり、寝室に入ってきた。
「はい!」青木岑は突然飛び出して、後ろから西尾聡雄の腰に抱きついた。
でも西尾様は全く驚かなかった...
彼は振り返って青木岑を抱き上げ、空中で一回転させた...
「どうして全然驚かないの?」青木岑は口を尖らせて聞いた。
「君が家にいるって分かってたからさ。玄関に今朝履いてた靴があったし、さっき下から寝室の明かりが付いてるのも見えたから」
「もう、分かったわよ。ホームズ様は推理が得意なのね。つまんないわ」
青木岑は、西尾聡雄が賢すぎて、ちょっとしたサプライズも台無しになってしまうと感じた...
「まだ寝てないの?」西尾聡雄は青木岑がもう眠りについているものと思っていた。
「うん、今病院から帰ってきたところ」