「はい」
「どこに行くの?」
「秘密」西尾聡雄は真面目な顔をした。
青木岑:……
「まあいいわ、3日間じゃそんなに遠くには行けないでしょうし」青木岑は実はモルディブに行きたかったのだが、あまりにも遠すぎて、往復だけで4日もかかる。遊ぶ時間を入れたら10日でも足りないだろう。
今の彼女と西尾聡雄にとって、10日間の休暇は贅沢すぎるし、現実的ではない。
西尾聡雄が神秘的に言わないので、青木岑も聞かなかった。
食事の後、彼女は2階に上がろうとした。
「どこに行くの?」
「荷物を用意しに行くわ。日焼け止めとか、服とか、日用品とか。そうだ、テントは必要?海に行くの?それとも山?」
西尾聡雄は困ったような表情を浮かべた……
「戻っておいで。何も持っていく必要はない。僕がいれば十分」
青木岑はうなずいた。「うん、私はあなたを連れていくから、あなたはお金を持ってきて」
西尾聡雄:……
まったく、いつから妻がこんなに口が達者になったのだろう?きっと熊谷玲子というあばずれから学んだに違いない。
時々ちょっとおどけた話し方をするようになったじゃないか。
二人は朝食を済ませ、西尾聡雄は青木岑の手を引いて外に出た。
何も持っていなかったが、二人ともカジュアルな服装に着替えていた。
お揃いのダークグレー、某高級アウトドアブランドの、デザインの良い男女兼用モデル。
どうやら本当に計画的だったようで、西尾聡雄は車も変えていた。マイバッハは車庫に入れたまま。
黒のレンジローバーに乗って……
高速道路に乗っても、青木岑はまだモヤモヤしていた……
「一体どこに行くの?私を売り飛ばすんじゃないでしょうね?」
「そんなことはしない。君を売ったら僕は妻を失うことになる」西尾聡雄は真面目くさって言った。
青木岑は上機嫌になり、スマートフォンを取り出してSNSを開き、ドライブ中の短い動画を投稿した。
そして書き込んだ——突発的な旅行。
これは本当に突発的な旅行だった。事前の計画も予兆も全くなかったのだから。
こうして突然西尾聡雄に連れ出され、彼女の代わりに3日間の休暇を申請してもらった。
熊谷玲子はすぐにコメントした。「遊びに行くのに誘わないなんて、マイナス評価」
「西尾様と行くの。本当に来る?」
「それなら遠慮するわ。邪魔はしたくないもの」