第382章:千佐子の蜜月(4)

「私は熊谷玲子さんと佐藤然さんをからかっているところです」

「二人はまだ拗ねているの?」西尾聡雄は普段他人の事には興味を示さないが、佐藤然と熊谷玲子の関係性には呆れていた。

「あなたも二人が拗ねていると思う?」青木岑は軽く笑った。

「そうじゃないの?」

「そうね、私たち考えが一緒みたい。でも、そう長くは続かないと思うわ。この件はすぐに解決するはず。熊谷玲子さんが我慢できないでしょうから」

西尾聡雄は口角を上げただけで何も言わなかった……

高速道路を丸五時間も走った。本当に遠かった。

その間、青木岑は何度も「私が代わろうか」と言ったが、西尾聡雄は全て断った。

妻が隣にいるだけで、全く眠くならなかった……

道中の景色さえ、いつもより美しく感じられた。

五時間後、西尾聡雄は前方のカーブで高速を降り、深い山々の中へと進んでいった。