第382章:千佐子の蜜月(4)

「私は熊谷玲子さんと佐藤然さんをからかっているところです」

「二人はまだ拗ねているの?」西尾聡雄は普段他人の事には興味を示さないが、佐藤然と熊谷玲子の関係性には呆れていた。

「あなたも二人が拗ねていると思う?」青木岑は軽く笑った。

「そうじゃないの?」

「そうね、私たち考えが一緒みたい。でも、そう長くは続かないと思うわ。この件はすぐに解決するはず。熊谷玲子さんが我慢できないでしょうから」

西尾聡雄は口角を上げただけで何も言わなかった……

高速道路を丸五時間も走った。本当に遠かった。

その間、青木岑は何度も「私が代わろうか」と言ったが、西尾聡雄は全て断った。

妻が隣にいるだけで、全く眠くならなかった……

道中の景色さえ、いつもより美しく感じられた。

五時間後、西尾聡雄は前方のカーブで高速を降り、深い山々の中へと進んでいった。

目的地に着いてはじめて青木岑は、ここが有名な北霊山——雲頂山脈だと気づいた。

雲頂山は北部の端に位置し、E国とC国の国境にあたる、三カ国の境界点だった。

そのため、一望三国と略されている……

青木岑は以前から雲頂山に来たいと思っていた。景色が綺麗だと聞いていたからだ。しかし、道が悪く、安全性も低いため、諦めていた。

まさか西尾聡雄が彼女をここに連れてくるとは……

目の前に聳え立つ山々を見つめ、青木岑は心の底から感動を覚えた。

実際に目にしなければ、自然の神秘的な造形がどれほど驚くべきもので、どれほど壮大なものかは決して分からない。

「雲頂山は本当に美しいわね……延々と続く山脈、なんて神秘的なんでしょう」青木岑は感嘆した。

超豪華な五つ星ホテルの駐車場に車を停め、二人は車を降りた。

青木岑はホテルの名前を見上げた——パームツリー国際リゾートホテル。

一目で高級感が漂う名前で、建物も豪華絢爛で壮大な気品があり、中国式とロシア式が融合したスタイルは人々の目を引いた。

西尾聡雄は青木岑の手を引いて中に入ると、ドアマンが慎重にドアを開けた。

フロントにて

「チェックインでしょうか?」

「はい」

「お客様、どのお部屋タイプをご希望ですか?事前のご予約はございますか?」

「予約はしていない。プレジデンシャルスイートで」西尾聡雄は高慢に答えた。