青木岑が吉田秋雪の家に車で着いたのは、二十三分かかった。
そこも高級マンションで、当時の家と内装は吉田家が出資したと聞いている。
青木岑がドアをノックすると、しばらくして、吉田秋雪がドアを開けた。
青木岑は彼女を見た瞬間、心が凍りついた……
吉田秋雪の顔色は悪く、真っ青で、白いネグリジェの下に見える血の跡が、とても目に痛かった。
「どうしたの?」青木岑は衰弱している吉田秋雪を支えた。
「お腹が少し具合悪くて、体中力が入らなくて……南区まで連れて行ってくれない?」
「南区?どうして第一病院じゃないの?あっちの方が医療設備が整ってるのに?」青木岑は驚いて言った。
吉田秋雪は首を振って、「同僚に私のことを知られたくないの、お願い、岑」
吉田秋雪の懇願する目を見て、青木岑は最終的に妥協し、彼女を支えて階下まで行き、車で南区まで連れて行った。
南区の設備も先進的だが、医療チームは第一病院より少し劣る、やはり療養施設だからだ。
「こんな遅くては、良い産婦人科医も当直していないわ。もし良ければ、私が診察しましょうか?」
「ええ、お願いします」吉田秋雪は頷いた。青木岑の医術を、少しも疑っていなかった。
青木岑は運転しながら吉田秋雪の状態を観察し、心配していた。
彼女も知っていた。吉田秋雪は生まれつき傲慢で、友達が少なく、他人に助けを求める電話をすることもめったになく、自分の両親にはなおさら言えない。
でも彼女の夫である寺田徹は今どこにいるのだろう?こんな時、彼女の側にいるべきではないのか?
「吉田先生、あなたの旦那様は……?」
「ナイトクラブで岡田麻奈美と遊んでいるわ」吉田秋雪はお腹を押さえながら、痛みを堪えて言った。
青木岑は黙り込んだ……
「岡田麻奈美が私に写メを送ってきたの、私に見せつけるために。でも残念ながら、もう私は気にしないわ。もう昔みたいに馬鹿じゃないから」そう言って吉田秋雪は携帯を開き、写真を表示した。
青木岑はちらりと見た。確かに岡田麻奈美と寺田徹で、とても親密な様子で、ダンスをしているようだった。
「吉田先生、吉田院長に連絡した方がいいですか?」青木岑は不安に思い、尋ねた。