「こんにちは」青木岑の口調はよそよそしく、まるで見知らぬ人に対するようだった。
「どうしてここに?南区で働いているんじゃないの?」
「ああ、今日は休みだから、みんなに会いに来たの」
「あっちの方は順調?」
「うん、とても」
「青木基金の会長に昇進したって聞いたよ。本当に羨ましいな」
「羨ましがることないわ。ただの社員よ。名前だけの役職だし」
「君は本当に凄いよ。いつか必ず素晴らしい医師になれると信じてる」大學時代から、寺田徹は青木岑の夢が看護師ではなく医師になることだと知っていた。
「冗談でしょ。看護師長で十分満足よ。医師なんて。そうそう、用事があるから、もう行くわ」
「待って、岑」寺田徹は明らかに青木岑を引き止めたがっていた。
「何か用件でも?寺田先生」
「この前、両親が来てね。地鶏の卵をたくさん持ってきたんだ。半分君にあげたいって。でも会う機会がなくて。だから住所を教えてくれれば、後で送るよ」