第376章:私はあなたの理性が嫌い(8)

「私だってこんなことになりたくなかったわ。でも、彼のやり方は許せないの。分かる?彼は岡田麻奈美と連絡を取り続けて、私の後ろで不倫してたのよ。岡田麻奈美の他にも、眼科の新人実習看護師とも怪しい関係があって、みんな知ってたのに、私だけ何も知らなかった。私って本当にバカね」

「それは...本当なの?何か誤解があるんじゃない?」青木岑は人を悪く考えたくないと思いながら言った。

「私、探偵に調べてもらったのよ。彼は私が知らないと思ってるけど、私は暴露する気もないわ。今は妊娠してるから離婚もできない。でも子供を産んだら、証拠を持って離婚を申し立てるわ。そうしたら寺田徹には一文無しで出て行ってもらうの。できるだけ遠くへね」吉田秋雪は目を赤くしながら歯を食いしばって言った。

彼女が怒り、興奮しているのが見て取れた...

「落ち着いて。怒りや悲しみは分かるけど、あなたには赤ちゃんがいるでしょう。妊婦の気分の悪さは赤ちゃんに直接影響するわ」

「青木岑、ここまで来たら、もう一つ聞きたいことがあるの。本当のことを教えて欲しいの、いい?」吉田秋雪はティッシュで涙を拭いながら、顔を上げて青木岑を見つめた。

「どうぞ」

「寺田徹が受賞した眼科学の論文、全部あなたが書いたものなんでしょう?」

青木岑は黙り込んだ...

「青木岑、真実を教えて。私はもうこれ以上バカみたいに騙され続けたくないの」

「私が書きました」青木岑はついに認めた。

「ふふ...叔父さんが教えてくれた時は信じられなかったわ。私はずっと寺田徹は医学の天才だと思ってた。人としては少し欠けてるけど、才能があるからいいと思ってた。でも今分かったわ。全部嘘だったのね。何の実力もないくせに、生まれつきの才能があるふりをして、本当に吐き気がする」

「あの時は卒業したばかりで、仕事を見つけるのが難しかったの。彼は医師だから、目立つ実績が必要で、それで一本書いてあげたの。その論文が上司に認められて、さらに何本か書くことになって、彼の眼科医としての基礎を築いたの。こんなことになるとは思わなかった」

青木岑も少し自責の念を感じていた。もし最初から寺田徹を助けなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。